話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
湘南・松田天馬に漂うスターの予感。
曹監督も期待する“状況判断の鬼”。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/11 07:00
2017年に特別指定選手として湘南入りし、プロとしては今年がルーキー。しかし松田天馬という選手、ただものではない。
東福岡仕込みの攻撃と、大学時代に磨いた守備。
松田の攻撃的なプレーの源泉は東福岡高校時代にある。
サイドハーフやシャドーでプレーする中で、ドリブルやパスセンス、フィニッシュの感覚を磨いて行った。高校3年の時は10番を背負って自らの攻撃力でチームを引っ張り、全国高校選手権に導いた。
守備は鹿屋体育大学時代にボランチにコンバートされ、かなり鍛えられた。「大学ではボール奪取の部分が一番成長しました」というように、164cmの小兵ながらボールを狩るのがうまく、相手へのチェックも体幹がしっかりしているので当たり負けしない。
クロスボールは高さでは勝負できないが、長崎戦では体をしっかりと相手に寄せて自由にさせないようにプレーしていた。
攻撃だけ、守備だけというプレーではなく、松田は現代サッカーの申し子らしく攻守両面に深く関わり、チームに貢献する。
それゆえ監督に「使いたい」と思わせる選手になっている。
曹監督の松田への要求は高い。
もちろん、まだ足りない部分はある。
守備では球際にもっと激しくいく余地があるし、攻撃ではもっとシュートを打ってもいい。試合から消えている時間もある。曹監督も「もっとリーダーシップを取って、攻撃守備どの場面でも存在感のある選手になってほしい」と松田への要求は高い。
今は対戦チームが松田のプレーをよく把握していないので自由にやれているところもあるが、今後試合を重ねていけば研究され、マークも厳しくなるだろう。
その壁を突破するのに苦労するだろうが、一流の選手ほどそういう壁を乗り越えてさらに成長し、違いを見せてくれるようになる。
さいわい、松田は非常に研究熱心でうまくなることに貪欲だ。
必ず自分の試合を見直して、そこから課題を抽出、練習でトライし、次の試合に活かしている。試合中も川崎戦では中村憲剛や大島僚太のプレーを見て、いいところを盗もうとしていた。
海外サッカーも良く見ており、世界で戦うために必要なプレーを研究するのはもちろん、コウチーニョ、イスコら個の優れた選手のプレーに刺激を受け、自分のスタイルの中に取り込んでいこうとしている。