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ビルバオへ“禁断の移籍”をした選手。
ソシエダは無償でのユニ交換も開始。

posted2018/02/07 08:00

 
ビルバオへ“禁断の移籍”をした選手。ソシエダは無償でのユニ交換も開始。<Number Web> photograph by Getty Images

イニゴ・マルティネスはロンドン五輪で永井謙佑を倒して退場した選手、というと日本ではわかりやすいだろうか。

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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 プレミアリーグほどではないとはいえ、今冬の移籍市場ではスペインでも珍しく大物選手の動きが多く見られた。

 中でも世界的に注目を集めたのは、固定額1億2000万ユーロ+出来高4000万ユーロという破格の移籍金を伴ったコウチーニョのバルサ移籍だろう。だがスペイン国内で最も衝撃を与えたオペレーションは、他にあった。

 レアル・ソシエダからアスレティック・ビルバオに“禁断の移籍”をやってのけた、イニゴ・マルティネスである。

 レアル・ソシエダとアスレティック・ビルバオは、言わずと知れたバスクを代表する2大クラブである。

 レアル・マドリーとアトレティコ、バルサとエスパニョール、セビージャとベティス、デポルティーボとセルタなどに比べれば、両クラブの関係は険悪というほどではない。特にファンは仲が良く、両者のバスクダービーでは異なるチームをサポートする友達同士で観戦する姿を目にすることが多い。

ビルバオへの移籍に特別な移籍金をつける。

 それでも、両クラブ間における選手の引き抜きがタブーであることに変わりはない。

 特に“純血主義”を貫くがゆえに補強の選択肢が限られるアスレティックに対し、ラ・レアルは少なくない選手との契約に「アンチ・アスレティック」と呼ばれる条項――アスレティックへ移籍する場合のみ特別に厳しい金銭的条件を設定する――を含めることでライバルクラブへの移籍を予防しているくらいだ。

 それでも過去には、12人の前例が存在する。中でもトップチームでデビューした数カ月後に17歳でアスレティックに引き抜かれたホセバ・エチェベリア、契約違反の有無を巡って訴訟問題にまで発展したイバン・スビアウレの移籍などは、両クラブの関係を大いに悪化させた。

 そして今回の一件も、それらの前例に匹敵する衝撃があった。

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