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監督も公認、史上最強の聖光学院。
「大阪桐蔭にも負けねぇぞ!って」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2018/01/29 11:20
福島の雄・聖光学院にとって、意外にも東北大会優勝は初めてだった。次は甲子園での快挙を狙っている。
斎藤監督が選手に伝える「驕る平家は久しからず」。
驕る平家は久しからず。
斎藤監督が毎年、選手たちに口酸っぱく唱えている格言のひとつだが、新チームが発足した昨年8月からのチームを見ていると、それを強く胸に刻んでいるような気がしてならない。
昨年8月から練習試合では連戦、連勝。「今年は是が非でも神宮大会に行く!」の号令の下でスタートしたチームとしては、最高の船出だったが「練習試合の結果なんてあてにならない」と斎藤監督はあえて選手を突き放す。
福島県大会からは、毎日のように「経験のない公式戦で予期せぬことは必ず起こる。普通に負けることだってあるんだ」と、プレッシャーを与え続けた。それに、選手たちは応えたわけだ。
「東北大会までは悲壮感があった。『自分たちはこれでいいのか?』と力を疑いながら、ひたむきに戦っていたよね。結果に満足する、納得するって感覚がなかった。そういう意味で、すごくチャレンジャーだった」
念願の東北王者に満足してしまった甘さ。
監督の危惧、選手の危機感がプラスに作用する。それが結果的にチームの隙を埋めることとなり、念願の東北王者まで上り詰めることができたわけだが、斎藤監督の心の奥底にはぬぐい切れぬ違和感も同居していた。
それが顕在化したのが明治神宮大会である。
「悲願成就で、選手たちはみんな『やった、やった!』って泣いたし、俺も横山部長も本当に達成感はあった。だけど、『その涙を流した後に何があるの?』と自問自答した時に、戦う理由、負けられない理由を明確にできなかった。
そこなんだよ! それを見つけられなかったのが明治神宮大会。結局は『行きたかった場所』だったんだよね。『行ってから何かを成し遂げる場所』ではなかった。そこが田舎もんだったなぁって。『初物の弱さ』なんて認めているようじゃ情けねぇって」
九州王者の創成館との一戦は、ひと言で言えば「あっという間に終わってしまった」試合だった。
先制を許しても食い下がるという聖光学院らしい粘り強さはあったものの、どこか淡々と試合が進んだ。4-6と僅差での敗北だったが、斎藤監督の「負けられない理由を明確にできなかった」という反省を、そのまま体現しているようにさえ感じた。