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監督も公認、史上最強の聖光学院。
「大阪桐蔭にも負けねぇぞ!って」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2018/01/29 11:20

監督も公認、史上最強の聖光学院。「大阪桐蔭にも負けねぇぞ!って」<Number Web> photograph by Genki Taguchi

福島の雄・聖光学院にとって、意外にも東北大会優勝は初めてだった。次は甲子園での快挙を狙っている。

史上最強のはずが、3年生の引退試合で完敗。

 主将の矢吹栄希がチームの心情を代弁する。

「自分たちでは『神宮で日本一になる』と言ってはいたんですけど、東北大会で優勝して神宮大会に出られたことに満足している部分があって。自分たちの弱さ、甘さに気づかず、試合前から隙が出ていたんだと思います」

 小さな隙間から、膿が出始める。

 選手たちの弱さと甘さが浮き彫りとなった出来事がある。昨年12月に行われた3年生との引退試合だ。

 東北大会優勝の原動力となった投手陣が、木製バットを使用した3年生に4点を奪われ、打線も昨夏のエース齋藤郁也をはじめ、甲子園メンバーを中心とした投手陣に完膚なきまでに封じ込められた。

 スコアは4-1の完敗。斎藤監督は、ため息交じりに不満を漏らしていた。

「相手をリスペクトしすぎ。戦う前から『うわぁ、(齋藤)郁也さん、前田(秀紀)さんたちが投げる。いい球だなぁ』って感覚で野球をやっているように見えた。そんなんじゃ力は出せないよね。

 新チームが始動した時に、横山部長から『このチームは、優しい子が多くてまとまりがある。でも、お人よしなのが欠点』って聞いていたからわかっていたけど、そういう人間性があからさまに出たのがこの引退試合であり、明治神宮大会だった。

 東北大会までは悲壮感があって、歴代でもすごくチャレンジャーになり切れていたのにね。お利口ちゃんなのはいいけど、『相手を絶対に叩きのめしてやる!』くらいのがめつさ。これなんだよ! 今足りないのは」

大阪桐蔭よりメンタルは上、という支えが欲しい。

 オフは紅白戦やケース打撃と実戦形式の練習を数多く取り入れ、選手たちに負けず嫌いの精神を植え付けさせた。「大阪桐蔭の強さが10だとすれば、うちは5だっていい。でも、うちはメンタルでは上だ。だから負けねぇぞ! って頼みの綱、支えが欲しい」と、センバツまでチームが成熟してくれることを信じ、今日も声を張り上げる。

 その斎藤監督の想いは、確実に選手に届いているはずだ。主将の矢吹が言う。

「今の自分たちに足りないのは、去年の3年生にあった野性的な気持ちだと思っています。常日頃から監督さんに言われているように、自分たちの優しさが、試合では弱さになってしまうというか。『相手をぶっ潰す』くらいの勢いで戦う気持ちが、センバツで日本一になるためには必要なことだと思っています」

 史上最強の呼び声に甘んじず、細かな隙をも見逃さずに埋めていく。全ては大願のため。桜が舞う季節に甲子園のど真ん中で大輪の花を咲かせるために、聖光学院は驕らず、戦う。

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