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日本馬術で知られざる世界的快挙。
五輪に出られなくとも伝説の人馬。
 

text by

北野あづさ

北野あづさAzusa Kitano

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photograph byRyosuke Kaji

posted2018/01/29 08:00

日本馬術で知られざる世界的快挙。五輪に出られなくとも伝説の人馬。<Number Web> photograph by Ryosuke Kaji

時に力強く、時に軽やかに。林とエクゥィスクリアウォーターの演技は、まさに人馬一体だ。

インスペクションの不通過、林の骨折と試練が。

 馬術では、実際の競技前に「ホースインスペクション」というものが実施される。これは、物言わぬパートナーである馬に無理をさせないためのもので、競技出場にふさわしい健康状態にあるかどうかを審判員と獣医師とがチェックすること。

 ここでエクゥィスクリアウォーターと林に厳しい現実が待っていた。歩様(歩き方)が整正ではないと判断されてインスペクションを通らず、出場することができなかったのだ。

 2頭の馬で選考競技会に臨んでいた林は、もう1頭のラムゼス・デアツヴァイタとのコンビで代表の補欠にはなれたが、結局リオでの出場は叶わなかった。

 それでも林はエクゥィスクリアウォーターの才能を信じていた。それを証明したかった。18歳のエクゥィスクリアウォーターが競技馬として活躍できる時間はそう長くない。日本で活動させることを決め、2016年の暮れに連れて来た。

 そして2017年春シーズンの競技を連勝。次の目標を10月の国際大会に定めてトレーニングをしていたが、直前に林が肋骨を折ってしまい、出場を断念。

世界トップは80~90%、日本は60%台後半がほとんど。

 次のチャンスは11月の全日本選手権だった。ところが、満を持して臨んだこの大会で、またもインスペクションに通らなかった。

 翌年には20歳。この先、競技に出るチャンスは何回あるだろうか。そんな想いを抱きながら、シーズン最後の国際大会に向けて、細心の注意を払って馬をケアした。コンディションの調整もうまくいき、12月の大会ではインスペクションに合格。ようやく競技本番の舞台に立つことができた。

 林とエクゥィスクリアウォーターが出場したのは「グランプリクラス」。馬場馬術競技には馬の調教進度に応じて様々なクラスがあるが、「グランプリクラス」はオリンピックや世界選手権でも実施される、最高難度の運動が要求されるクラスだ。

 馬が左右の肢を深く交差させて歩くハーフパス、後肢を中心にその場で回転するピルーエット、肢を大きく高く上げて歩くパッサージュ、2拍子のリズムをとりながらその場で足踏みをするピアッフェ、駈歩(かけあし)をしながら2歩ごと、または1歩ごとに左右の肢を入れ替えていく連続踏歩変換(とうほへんかん)など、とにかく難しい技のオンパレードだ。

 運動項目毎に10点満点で点数がつけられ、トータルの得点を満点で除してパーセンテージで表示される。世界トップレベルでは80%から90%という数字が出るが、日本では最高でも60%台後半がほとんどだ。

【次ページ】 自由演技で日本では見たことのない「74.875%」。

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#エクゥィスクリアウォーター

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