濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RIZIN年末大会が見せた新しさ。
その背景にあった“つなぐ”物語。
posted2018/01/06 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
あらためて考えても驚くばかりだ。
恒例のRIZIN年末大会(12月29日・31日、さいたまスーパーアリーナ)、その締め括りとなる大晦日のラスト3試合は、格闘技新時代の象徴だった。
第12試合:堀口恭司 vs. 石渡伸太郎(バンタム級GP決勝)
第11試合:RENA vs. 浅倉カンナ(女子スーパーアトム級GP決勝)
第10試合:那須川天心 vs. 藤田大和(キックトーナメント決勝)
6人のうち最年少は那須川で19歳。30代以上は32歳の石渡だけだ。RIZINがきっかけで“世間一般”にお披露目されたと言ってもいい選手たちである(堀口は元UFCトップファイターだから“世界デビュー”はしているのだが)。PRIDEのプロモーターでもあった榊原信行実行委員長は、一夜明け会見でこう言った。
「本当に顔ぶれが変わった。顔ぶれが変わったし世代が変わりました」
その変化に不満を感じたファンはいなかっただろう。“神童”那須川は超高速の打撃でトーナメント2試合を連続KOの圧勝。いまやRIZINの看板の1つとなった女子の頂上決戦では、RENAがMMA初黒星を喫した。
シュートボクシングのエースとしても女子格闘技の代表格だった“女王”が、キャリアのハイライトとなるべき桧舞台で敗れた。そのインパクトは凄まじいものだった。
最も注目度が高い舞台で敗れる、しかもタップを拒否して絞め落とされるというドラマ性は、RENAが特別な選手だからこそでもあるのではないか。
レジェンドたちに負けなかった“今”の闘い。
そしてバンタム級GPでは、UFCでタイトルマッチの経験もある堀口が、7月大会での1回戦に続いて29日の2回戦、31日の準決勝&決勝と全試合KO・一本で優勝を決めた。
この大会では、ミルコ・クロコップvs.高阪剛のレジェンド対決も組まれていた。矢地祐介に敗れた五味隆典は、実に11年ぶりに大晦日のリングに上がっている。ミルコと五味が、古くからのファンの感情移入を誘ったのは間違いない。
とはいえ大会全体の空気をノスタルジーが支配することはなかった。感じられたのはあくまで今であり、未来への期待だ。