話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
清武弘嗣をみんなが待っている。
ロシアW杯イヤーの始まりは天皇杯。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/12/31 08:00
清武弘嗣ほどマルチロールな中盤センターの選手はそういない。彼の復活を、多くの人が待っている。
セレッソへの帰還はプラスに働くはずだった。
清武の精神性は、今もそれほど変わらない。人の性格は簡単に変わらない。
だが、プレッシャーのかかる舞台でどれだけ力を出せるかは、その選手を計るバロメーターになる。精神状態によってプレーの出来が大きく左右される選手は、監督にとっては使いづらい選手になってしまう。
だからこそ、セレッソに戻ってきたことは、清武にとって精神的には大きなプラスになると思った。海外への移籍はメンタルを鍛えるという側面もあったが、いつまでもそこにこだわっていても、時間が過ぎていくだけだ。
海外という環境がマイナスに影響するようなら、自分の力を発揮しやすい環境でプレーした方が、清武本人のためにもクラブのためにもなるからだ。
しかし現実は厳しかった。今シーズンは22試合6得点。実際は、その数字以上にうまくいかなかったと清武は思っているだろう。
さいわい、清武の技術は錆びていない。
だが、ムダなシーズンでは決してなかったはずだ。食事面を見直して肉体改造に取り組んだり、練習前後のストレッチやケアにも力を入れた。怪我はもちろん喜ばしいことではないが、復帰の過程で身につけたものは、彼が1年でも長くプロとしてプレーすることを可能にしてくれるだろう。
「次のロシアW杯では、キャプテンになってチームを引っ張りたい」
ブラジルW杯での戦いを終えた後、清武はそう言った。
さすがにキャプテンにはなれそうにないが、プレーで引っ張ることはまだ可能だ。さいわい、技術は錆びていない。2018年元日の天皇杯決勝という舞台で復活への狼煙を上げられれば、何度も泣いた今シーズンのことも、自分の成長の糧と思えるのではないか。
そういうプレーをファンも、そしてハリルホジッチも待っているはずだ。
もちろん、清武本人も。