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大学ラグビーは未熟だからこそ面白い。
早慶戦に溢れていたミスとプライド。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2017/12/01 08:00
トップリーグに比べれば体も小さく、ミスも多い。しかしその懸命さは、どのカテゴリーよりも熱いと言って過言ではない。
大学ラグビーだけが取り残され、観客の年齢は高い。
関係者は、
「サンウルブズのファンのデータを見ると20代が多く、Jリーグのサポーターと近いかもしれません」
と話しており、ラグビーに新しい層を呼び込んでいる。
それが、大学ラグビーとはリンクしない。大学ラグビーだけが取り残された印象で、スタンドにも私と同世代のオーバー50の観客が多い気がする(彼らの“信仰心”は篤い)。
早慶戦、早明戦になれば秩父宮は満員に近くなるが、1980年代に早稲田対日体大、明治対日体大が大入りだったことを記憶している身としては、実に淋しい。
「観客数が減少しているので、その分、各大学への入場料収入の配分も減っています。つまり……部の運営が大変です」
そう話してくれたのは、伝統校の卒業生。活動費を捻出するために、企業との連係模索も盛んだ。
このプライドは、他のカテゴリーには絶対にないもの。
代表やトップリーグと比べ、相対的に「大学ラグビーは未熟」というレッテルが貼られてしまったが(そうした上から目線で大学ラグビーの解説をする人も中にはいる)、早慶戦を見る限り、未熟だからこそ面白いのだと思う。
学生ゆえの単純なミス(たとえば、山のようなノックオン)。しかしライバル校を相手に負けられないというプライドは、他のカテゴリーでは絶対に味わえないものだ。
早慶戦の試合後、記者会見で面白かったのは、両軍の指導者が、「前半は相手のキッキング・ゲームに付き合ってしまって」と話したことだ。お互い、思った通りのゲームプランでは試合運びが出来なかったということだ。
たしかに前半はミスに加え、司令塔のスタンドオフによる単純なキック合戦に終始したきらいがあった。しかし、そうなってしまったことには理由があると両軍の指導者は語った。慶応の金沢篤ヘッドコーチは、
「大きな舞台、大観衆、対抗戦の順位がかかった試合で、いつもとは違うプレッシャーを感じていたのかもしれません。その結果セーフティな、保守的なプレー選択をしてしまったのかな、と思います」
と話した。学生たちが感じる特別なプレッシャーがそこにあったのだ。