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南ア戦に衝撃を受けて銀行を辞め……。
中澤健宏がラグビーに帰ってきた。
posted2017/12/07 10:30
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Nobuhiko Otomo
ラグビーの現場で取材を続けていると、幸福な再会というのがある。
中澤健宏との再会もそうだった。
初めて中澤のプレーを見たのは今から4年半前、2013年7月のことだった。秩父宮ラグビー場で、初の試みとして行われた「関東大学オールスターゲーム」で、ひとりの選手が話題をさらった。
「対抗戦選抜」チームに、Bグループからただひとり選ばれ、帝京大や早慶明のスター選手に混じって大暴れ。パワフルな突進からチャンスを作り、1トライ1ゴールを決めたのが立教大4年の中澤だった。
「Bグループにあんなすごいヤツがいたなんて、知らなかった。きょう一番のオドロキ、発見でした」
そう言ったのはFLで出場し、MVPを受賞した金正奎(早大4年・現NTTコム)だった。一緒にプレーした対抗戦選抜の選手からも、対戦相手のリーグ戦オールスターの選手からも「びっくりしたよお!」的なコメントが聞かれた。
対抗戦選抜のメンバーは、SHが流大(帝京大3年・現サントリー)、SOが小倉順平(早大3年・現NTTコム)、HOに坂手淳史(帝京大2年・現パナソニック)と、日本代表を支えることになる強者が並んでいたが、無名の背番号15はまったく負けない存在感を放っていた。
立教大4年の彼は、銀行への就職を決めていた。
これだけの才能だ。きっとトップリーグのどこかへ行くんだろうな……、そう思いつつ話を聞いた記者に、4年生だった中澤は答えた。
「もう銀行に就職が決まっているんです。社会人として仕事をしっかりやりたいし、卒業後はクラブチームでプレーを続けます」
そうか、勿体ないなあ……でも、ラグビーの神に気に入られたなら、きっと戻ってくるだろう。そんな気もした。
そして中澤は戻ってきた。