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MLB新人打者の台頭とFA市場。
大谷が活躍なら30代受難に拍車? 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2017/11/25 07:00

MLB新人打者の台頭とFA市場。大谷が活躍なら30代受難に拍車?<Number Web> photograph by Getty Images

今シーズン29本塁打を記録したJ・D・マルティネス。彼ら好打者はどこに新天地を求めるだろうか。

30代前半のパワーヒッターがワリを食うことに。

 新鮮な名前が多いので、つい書き連ねてしまった。実をいうと、新人の長距離砲が叢生する傾向は2016年にはじまっている。'16年にはトレヴァー・ストーリー(ロッキーズ)やコーリー・シーガー(ドジャース)を筆頭に6人の新人が20本塁打以上を記録した。

 さらにさかのぼっていうと、'15年はジョク・ピーダーソン(ドジャース)、クリス・ブライアント(カブス)、カルロス・コレア(アストロズ)ら4人。'14年はホゼ・アブレイユ(ホワイトソックス)、とジョージ・スプリンガー(アストロズ)の2名。'13年もジェド・ジャーコ(当時パドレス)、エヴァン・ギャティス(当時ブレーヴス)の2名。等差級数的な増加、といいたいところだが、ここへ来て急に跳ね上がったと見るほうが妥当だろう。

 どうやら昨今の新人選手は、ホームランを打つコツを早くから体得しているようなのだ。もちろん、飛ぶボールの採用やヒッターズ・パークの増加という背景も見逃せないのだが、こうなると、いわゆるFA適齢期に当たる30代前半のパワーヒッターがワリを食うことになりかねない。

仮に大谷が短期間で結果を出したら……。

 思い出してみると、数年前までは、中堅のFA中長距離砲が、ずいぶん好条件の契約を勝ち取っていた。たとえば、2009年のジェイソン・ベイは、4年合計6600万ドルでメッツと契約を結んだ。2012年のニック・スウィッシャーも、4年合計5600万ドルでインディアンスと契約している。そしてご承知のとおり、両者とも、高額契約のあとはあまり振るわないまま球界を去っていった。

 こういう例もあるので、ジェイ・ブルースやカルロス・サンタナには、あまり高い値札が付かないとみられている。守備の巧いホズマーやケイン、総合力抜群のJ・D・マルティネスなどは評価が高いが、このところ好調のアストロズ、ドジャース、カブスといった球団がいずれも根気強い新人育成で高いパフォーマンスをあげている事実は、やはり無視しがたいところだ。

 この傾向は、定着するのだろうか。メジャー昇格から6年がんばって高額契約を勝ち取るという従来の風潮は、変化を余儀なくされるのだろうか。もし仮に、大谷翔平がどこかの球団と格安の条件で契約を結び、比較的短い期間で結果を出すようなら、この傾向にはさらに拍車がかかるかもしれない。30代前半の中堅選手の受難という事態は、意外な場所から噴出しはじめたようだ。

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