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武豊&ルメール、大一番前の対談。
キタサンやレイデオロの印象は……。
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byKisei Kobayashi
posted2017/11/24 08:00
武豊とルメール。日本とフランスが誇る名手が大いに語り尽くした。
当時、私はユタカさんをたくさん観察しました。
武 当時ジョッキールームのロッカーはお互い割と離れていたけど、エージェントが一緒だったんだよね。同じ馬に乗ったこともあったね。
L 当時、私はユタカさんをたくさん観察しました。日本で一番凄いジョッキー。レースではスムーズにスタートを出て、いいタイミング、いいペースで馬を走らせている。いっぱい勉強させてもらいました。
若いうちは経験が大事、ですね。日本に短期免許で来ていた時は、まだ若かったけど、毎週のように重賞に乗ることができた。人気馬ではなかったけど、大きなレースに乗ることができる、経験値は大きかった。
――フランスでは重賞に乗れなかった?
L 日本の重賞は出走頭数が15頭とか、たくさんだけど、フランスは5~6頭立てのレースばかり。トップジョッキーが15人ぐらいいても、10人は重賞に乗れずジョッキールームで待機しています。
武 そうだね。それにフランスはあまりジョッキーのシャッフルがない。
L 厩舎とオーナーとジョッキーのコンビネーションが強い。このオーナーの馬だったら絶対にこの騎手が乗るといったコントラクト(契約)が必要になるから。
日本では複数の騎乗依頼があった時に、一番いい馬に乗ることができるけど、フランスでは、別な馬を選んだら、オーナーに「どうして私の馬に乗りたくない?」。次のレースで、その馬に乗りたいと思っても「ユーはノー」と言われてしまう。
武 日本は「今回はダメでも、次は是非お願いします」みたいな感じがあるもんね。
L 私は日本での方がレースにリラックスして乗れますね。オーナーや調教師からのプレッシャーが少ないから、自分の思う様にレースに乗れる。
武 フランスは調教師が結構うるさい(笑)。
L 指示がいっぱい飛んできます。でも、みんな同じ作戦(笑)。
例えば10頭立てだと「コースの内3番手、逃げ馬の後ろへつけろ」。みんな同じ指示を受けてるから誰も逃げる馬がいない。結果、スローペースになって、みんなバンバン馬をぶつけてくる。レースが終わったら調教師が「なんで逃げた?」「なんで大外だった?」と質問攻め(苦笑)。