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フェデラーに憧れ、ナダルに勝利。
18歳シャポバロフの才能に世界騒然。
posted2017/11/05 08:00
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph by
Getty Images
錦織圭ファンがちょっと目を離した隙に現れた。
グランドスラム通算7勝のマッツ・ビランデルが言うところの「ナダルの激しさとスピード、フェデラーの優雅さを兼ね備える18歳」。それがデニス・シャポバロフだ。
昨年のウインブルドンジュニアを制し、今季からツアーに本格参戦し始めたばかり。彼が快進撃を見せたのはこの夏のことだった。
8月のロジャーズ・カップ(マスターズ1000)でファン・マルティン・デルポトロをストレートで下し、ラファエル・ナダルには逆転勝ちしてベスト4、続く全米オープンではジョーウィルフリード・ツォンガらを破って16強入りした。特に衝撃的だったナダル戦を見た人なら、生きる伝説2人に例えたビランデルの説もさほど大げさには思えないはずだ。
ロシア出身の両親のもとイスラエルで生まれてカナダで育った。テニスを教えた元プロ選手の母は、いまもチームの一員だ。
左腕からのストロークは、若者にありがちな一発で仕留めるタイプではなく、配球でしっかり組み立てるタイプ。それでいてフォアハンドと片手打ちバックの両サイドから、信じられない角度にフィニッシュショットを突き刺してみせる。あのパフォーマンスなら年初250位だったランキングが、8月に100位を突破して10月には50位を記録するのも当たり前。今シーズン新設され、11月7日にミラノで開幕する「ネクストジェネレーション・ATPファイナルズ」(21歳以下のトップ8が出場)にも難なくこぎつけている。
シャポバロフ「ベルディフとの対戦がきっかけだった」
そんなシャポバロフが10月に来日した際、改めて話を聞くことができた。
――ジュニアからシニアへ移行したのが今シーズン。夏まではツアー下部大会のATPチャレンジャーや、ITFフューチャーズへの参戦がほとんどでした。いったいどうして、マスターズやグランドスラムの大舞台で突然の快進撃が始まったのでしょう。
「6月にロンドンの大会(ATP500)に出場した時、予選を勝ち上がって2回戦でトマーシュ・ベルディフと対戦(6-7、7-6、5-7で敗戦)したんだ。それがきっかけだった。あの試合の後から『I can do this』って自分自身を信じることができるようになった。それまでに確実に力をつけていたし、持ち味を生かしたテニスができていると感じていたしね。次にトップ選手と戦う機会になったのがロジャーズ・カップだった。だから、あの大会のなかで急にレベルアップしたわけじゃない。うかがっていたチャンスが来て、それをつかむだけのレベルにあったということだと思う」