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またも名将に認められた長友佑都。
インテルで先発奪回の要因とは何?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2017/10/18 11:00
今季初のミラノ・ダービーでは大型補強のミランから終了間際の勝ち越し弾で劇的な勝利を飾った。長友もスパレッティ監督の信頼を完全につかんだ。
「インテリスタに長友を再評価してもらうため……」
アウェーでの4節クロトーネ戦は、象徴的なゲームだった。
前節スパル戦に続いて先発を任されたダウベルトは、後半を15分ほど過ぎたあたりで左脚の自由を失った。暑さと強風の中でプレー判断やペース配分を誤り、いたずらに体力を消耗して太ももを攣らせたのだ。セリエAへの順応にまだ時間がかかるであろうことは誰の目にも明らかだった。
試合は0-0で膠着していた。昨季終盤の同カードで格上インテル相手に番狂わせを演じたクロトーネの鼻息は荒く、彼らは容易にボールを離さなかった。
急ぎ体を温めた長友は64分に投入されると、チームに一息もたらし、左サイドから攻守のアクセントとなった。
FWペリシッチとのコンビで中央のMFジョアン・マリオにスペースを創り出し、流れをじわじわ手繰り寄せる。長友は試合終盤、左サイド突破から相手DFのファウルを誘い、決勝点に繋がるFKを獲得した。
どれほどライバルが加入しようとも、このクラブでやっていくなら、新加入選手とは1日どころか7年の長がある。今やメディア上の評価も逆転した。
“DFダウベルトは、インテルのアウシリオSD(スポーツ・ディレクター)が、インテリスタたちに長友を再評価してもらうために大金はたいて獲得した当て馬だったに違いない”という小噺まで作られたほどだ。
長友は「メンタル・コントロールが上手い」。
根を張るように指揮官の信頼を得た長友に、ダービーの試合後、歴代の監督たちと比べてスパレッティ流の特長を尋ねてみた。
彼の答えは「メンタル・コントロールが上手い」というものだった。
「試合に出られるのは11人だけ。出られない選手は落ち込んでしまいがちになる。そういう選手たちもモチベーションが高い。文句を言う選手が一人もいない」
6節を終えた時点で、スパレッティが先発に起用したのは14人しかいなかった。現時点のインテルはリーグで最もスタメンの顔ぶれが固定されたチームだ。
それでも不満が出ないということは、昨季までなかった結束力が生まれていることを意味する。