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休養のゴールドに引退のリプニツカヤ。
女子フィギュアスケーターの厳しい現実。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2017/09/14 08:00

休養のゴールドに引退のリプニツカヤ。女子フィギュアスケーターの厳しい現実。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2013年のグランプリシリーズ第2戦スケートカナダの女子シングル表彰台にて。優勝はリプニツカヤ、銀メダルは鈴木、銅メダルはゴールドだった。

スランプは体重が原因? との推測も。

 現在のアメリカで女性の体重に関する話題は、日本人の我々が想像する以上にデリケートに扱われている。特に若い女性の間では拒食症が深刻な社会問題となっており、何気ない一言が、この命に関わる病いの引き金になりかねない、と言われている。

 国を代表するトップアスリートとして、ゴールドがここまで率直な発言をしたことは、現場に居合わせた我々記者全員にとって、大きな驚きだった。

 この発言の後、ゴールドはフランス杯で8位。全米選手権で6位に終わり、(10月のジャパンオープンのアメリカチーム3位を除いて)ついに表彰台に一度も立つことなくシーズンを終えた。

 こうした事実をあわせて考えると、今回の「専門家の助けを借りる」というのは恐らく体重管理に伴う心理的な問題のカウンセリングではないか、と多くの関係者たちは推察している。

リプニツカヤの引退宣言の衝撃。

 ゴールドがジャパンオープン欠場の発表をする数日前、ロシアのユリア・リプニツカヤの引退声明が話題となっていた。

 ソチ五輪ではわずか15歳で代表に選ばれ、ロシアチームの団体戦金メダルに大きな貢献を果たし、「ソチ五輪の顔」とさえ言われた天才少女リプニツカヤ。

 だが2014年シーズン以降、体重の変化、怪我などのせいもあって不調が続き、ロシア選手権でも表彰台を逃していた。過去3シーズンは、欧州選手権、世界選手権とも出場することすら叶わなかった。

 ロシアのタス通信社によると、リプニツカヤの母親が、本人は3カ月に渡る拒食症の治療を受けた後に引退を決意したことを告白したという。

 現在ロシアの女子は才能ある若手が次々と登場し、その世代交代は過酷なまでに早い。リプニツカヤもロシア代表でなければ、ここまで追いつめられることはなかったかもしれない。あれほどの才能を持った選手の、悲しい結末だった。

【次ページ】 体重が300g増えるだけでジャンプが……。

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