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人を動かし、時に自ら打つセッター。
冨永こよみは司令塔に定着するか。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/09/13 07:00
冨永こよみ(10番)のポジティブな空気はチームを盛り立てている。セッターはチームの要だけに、競争の激化は喜ばしいことだ。
アタッカーからセッターへの転向に潜む難しさ。
アタッカーからセッターへの転向には、技術面はもちろん、メンタル面の切り替えも必要だ。その両方をクリアしてトップレベルでプレーできるようになるのは並大抵のことではない。
「技術面で違うのはもちろんですが、気持ちの切り替えというのはすごく難しかった。アタッカーの時は、大きい声を出して喜びや悔しさなどの感情を表に出すプレースタイルでした。でもセッターは、冷静にチームや相手を見てどんな時も一喜一憂せず、感情を表に出さない必要があると思いました。
感情を内に秘めておかなきゃいけないというのは、すごくモヤモヤがありました。でもセッターを始めて5、6年してからはアタッカーを活かす面白さがわかってきましたし、自分のトスでアタッカーが輝いている姿を見て嬉しいという気持ちがすごく出てきました」
ラリーの流れの中でスパイクを打つシーンも。
一方で、元アタッカーであることを武器にもしている。日本の代表セッターで冨永ほどツーアタックを打つセッターはいなかったのではないか。今大会でも、特にロシア戦では10本のスパイクを打った。後半はツーアタックを読まれて相手に拾われることも多かったが、中田監督からはチャンスがあれば打っていいと言われているという。
また、冨永が前衛で、ラリー中に冨永が1本目のボールを触った時には、そのままライト側のスパイクの助走に入った。
「メインの攻撃としては考えていませんが、オプションとして。自分が攻撃に参加してトスを呼ぶことで、おとりというか、レフトへのブロックが少しでも遅れたらいいなと」
本人は“おとり”の意識だったが、2本目を上げるリベロの井上琴絵が実際に冨永にトスを上げる場面も何度かあり、これには少々驚いた様子だった。
「それで決められればいいんですが、やっぱり世界の強豪を相手に普段アタック練習をしていない選手が決めるのは難しいと思うので、武器にするためには練習しないといけないなと思います」