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「スクール・ウォーズ」以降の接点を。
岩渕理事が語ったW杯以後のラグビー。
posted2017/09/08 17:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Kiichi Matsumoto
南アフリカを倒した「ブライトンの奇跡」は大きな一歩ではあったが、序章に過ぎない。日本ラグビーフットボール協会・岩渕健輔理事が語った究極の目標は自国開催W杯、東京五輪を経た2050年、公園に子供たちとともにラグビーボールがあること。つまり数十年に1度の奇跡でなく、ラグビーを日常にすることだという。
今年4月に日本ラグビーフットボール協会特任理事に就任した池田純氏との対談に入ると、2人はラグビー界の抱える課題へと切り込んだ。
池田 W杯の後、現状はどうなんですか? あまり強くなっていない気がするんですが。
岩渕 日本がラグビーの強豪国のように強くなったわけじゃないんです。W杯であのチームが3回勝ったという話で、強豪国になったということではありません。その後はなかなか勝っていない。W杯の後はメディアにも好意的に取り上げていただきましたが、その後は報道も減っていますしね。
詳しく知らないライト層を取り込む鍵はなんですか?
ここで疑問が湧く。あの南アフリカに勝っても、W杯で3勝しても、ラグビーを取り巻く環境は劇的には変わらない。強くなること以外に何が必要なのか。池田氏が切り込む。
池田 やはりビジネスとして発展させないといけない。ラグビーを詳しく知らないライト層を取り込む鍵はなんですか。
岩渕 これがすごい難しくて。昔はラガーシャツ、テレビドラマ、正月の学生ラグビーと一般の方もラグビーを目にする機会があったが、今はそういうものが一切ない。グラウンドに来てもらう前の段階。接点を作りだすことができていない。
池田 ラグビーといえば僕の中では「スクール・ウォーズ」なんです。岩渕さんはどうですか。
岩渕 やはり「スクール・ウォーズ」ですかね……。今、指導者をしている知人とも話すことがあるんですが、「部員はもう増えないよ。だってドラマにしても、漫画にしてもラグビーを(知らない生徒に)説明できるものがないんだから」ということを言われます。