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ハリルを支えるスタッフ6人に聞く。
皆さんの担当業務って、何ですか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTomoki Momozono
posted2017/09/06 11:30
アウェーのUAE戦で本田に指示を与えるハリルホジッチ監督。その後ろでは手倉森コーチもピッチ全体に気を配っていた。
対戦国の守備、攻撃、短所と長所の映像を作成。
準備で言えば、ビデオ(映像)は極めて重要だ。私が指示してテクニカルスタッフに編集を依頼する。対戦国の分析は最初にシステムを示し、守備の形、攻撃の形、長所、短所などが分かるようテーマごとに15分ほどにまとめる。3月のUAE戦の場合、オマルを含めた3人のアタッカーの特徴をそれぞれ3分間ずつ、映像を用意した。ヴァイッドからリクエストがあったためだ。
一方で自分たちの映像も作成する。全体的にはポジティブに持っていけるよう心掛けている。選手の個人ビデオも用意する。手倉森コーチと私と選手で一緒に見て、改善点やうまくいっているプレーを確認する。
代表は試合までとにかく時間がない。戦術的なトレーニングができるのは1日、2日程度。疲労回復やコンディション調整に注意を払わなければならない。だからこそビデオをフル活用して端的かつ効果的に伝えることが大切になる。
選手とコミュニケーションを取るのは、彼らに自信を持ってもらいたいから。フランスでは「成長しなければ衰退につながる」という格言がある。選手に成長を促していくのが私の任務だと思っている。
「私は監督の意思を汲んだ、いわば小ハリル」
手倉森 誠(コーチ)
MAKOTO TEGURAMORI / COACH
1967年11月14日、青森県生まれ。住友金属などでプレーし、'95年から指導者に。ベガルタ仙台の監督ののち、'14年からリオ五輪世代の代表監督として五輪まで指揮。'16年9月、A代表コーチに。
リオ五輪を終えてA代表に復帰したのは、昨年9月。UAEとの初戦に敗れたことで、私に声が掛かったのかもしれない。だが五輪監督がA代表に復帰するのは初めてのケースで、これが縁というもの。やり甲斐を感じてコーチの要請を引き受けた。
ここに来て選考のやり方が変わってきた。昨年11月のサウジアラビア戦、3月のUAE、タイ戦では監督のほうから「こういうふうに戦いたいから、その戦術に見合った選手を探すように」とテクニカルミーティングで言うようになった。
UAE戦ではアンカーを置く4-3-3のプランを先に監督が提示することで(ガンバ大阪で同じシステムでプレーする)今野や倉田の名前が出てきた。昨年10月のイラク、オーストラリア戦の際は合宿に入ってからどう戦うか説明されていたので、大きな変化と言える。これは私の憶測だが、監督が日本人選手の特徴や傾向に理解を深め、最終予選も2巡目に入って相手の戦術も把握したため、先に戦い方を提示するスタイルに変えてきたんだと思っている。
私は監督の意思を汲んだ、いわば「小ハリル」。たとえば我々の基本フォーメーションを、監督は4-3-3と言う。形は4-2-3-1に見えるが、サイドを含む前の3枚が(得点の仕事をする)FWという監督の認識がある。そういった考えを理解した上で、選手にも伝えるようにしている。