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ハリルを支えるスタッフ6人に聞く。
皆さんの担当業務って、何ですか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTomoki Momozono
posted2017/09/06 11:30
アウェーのUAE戦で本田に指示を与えるハリルホジッチ監督。その後ろでは手倉森コーチもピッチ全体に気を配っていた。
「アリ」を増やしておけば、戦いに幅が生まれる。
縦に速い攻撃で裏を取って、カウンターで得点するのが我々の戦術。ただ、「前に行け」と言われて、やれないケースもある。一方で「降りてくるな」とも言われてないのだから、選手に「一度前に行って降りてくるのはアリだ」と私が伝えることで彼らも工夫するようになる。この「アリ」を増やしておけば、戦いに幅が生まれる。
そうして、監督と選手の間に、意識的に入っていく。監督はスタッフの声に耳を傾けてくれるので「選手にはこういう言い方にしたらどうですか?」と助言することもあれば、逆に選手に対して「監督の言葉をこう捉えてみてはどうだ?」と示すこともある。「監督」、「日本人」と両方の立場が分かるから、伝わり切れていないなと感じたら私が出ていくようにしている。
選手たちは、監督から言われたことだけをやればいいということじゃない。日本サッカーを発展させる気があるかどうかを監督は求めている。「小ハリル」が間に入って、その覚悟を植えつけていければいい。
「エージは、ニシは、ハヤシは、ヒガシはどうだ?」
エンヴェル・ルグシッチ(GKコーチ)
ENVER LUGUSICC / GOALKEEPER COACH
1961年5月1日、ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。旧ユーゴ、トルコでプレーし、'02年から指導者に。ボスニア代表の他、イラン、中国、UAEなどのクラブでGKコーチを務める。'16年7月、日本代表コーチに。
ヴァイッドとは旧ユーゴスラビア時代から30年以上の関係でしょうか。彼は仕事熱心で完璧主義者。でも私自身も完璧主義者なので仕事はやりやすい。
ヴァイッドはUAE戦の前、私と浜野コーチに「今どのGKが一番いい状態か?」と聞いてきました。
西川周作、川島永嗣、林彰洋はいずれもいい準備をしてくれていました。特に川島はフランスで出場機会に恵まれていない状況にもかかわらず、練習では誰よりもいい状態でした。私たちがそうした見解を述べた上で、最終的にはヴァイッドが判断しました。
試合前の準備としては、まず浜野コーチが相手のプレーの傾向や、セットプレーの特徴などが分かるビデオを用意して、GK目線で説明します。UAEの攻撃をトレーニングセッションに落とし込み、実際にイメージをさせていくわけです。結果的にUAE戦、タイ戦2試合とも川島は完璧なプレーを見せてくれました。
ヴァイッドにしっかり正確な情報を伝えるのが私の仕事です。朝、協会に出勤する前、ジムで会うともう「エージはどうだ? ニシはどうだ? ハヤシは? ヒガシ(東口順昭)は?」と矢継ぎ早に聞いてきます。同じマンションに住む彼の部屋を訪れるといつも誰かの試合をチェックしています。彼は毎日4、5時間しか寝ていないんじゃないかな。
ヴァイッドは私のことも浜野サンのことも信頼してくれています。完璧主義者の彼のニーズに応えるべく、これからも完璧な仕事をしていきたいと思っています。