サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「サコが足元で受けるなら僕は裏へ」
岡崎慎司の現代表での仕事は何か。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAsami Enomoto
posted2017/09/04 11:50
大迫勇也のキープ力と岡崎慎司の裏へ抜ける力、2つの選択肢を持つことができれば、日本の戦術の幅は大きく広がる。
「岡崎はレスターではDFだ」という監督の発言は……。
レスターでは加入初年度から先発に定着し、奇跡のリーグ優勝を果たした。それでも「献身性とかの評価はもうお腹いっぱい」と安堵感はない。ストライカーとして真に生き残るためには、ゴールという“数字”がもっとも重要で、信頼度が高いことをそのキャリアで嫌というほど味わってきた。
そして、それはハリルホジッチ体制の日本代表でも表面化する。当初は先発起用され得点を挙げていたが、2016年9月から始まった最終予選では、ここまで9試合のうち3試合しか先発出場していない。そしてゴールはタイ戦の1得点のみ。Aマッチ出場100試合を達成した岡崎だが、ハリル体制では苦悩していた。
レスターでプレミア優勝を成し遂げた直後、ハリルホジッチ監督はこう話していた。
「岡崎はレスターではDFだ。しかし日本代表はレスターとは違う。異なる役割を求める」
これを岡崎はどう受け止めたのだろうか。欧州で生き残るために選んだ自分のプレースタイルを理解してもらえていない、評価されていないと感じてもおかしくはないだろう。
“世代交代”というよりも、チームへのフィット感。
2トップで起用されるレスターと、1トップが採用される代表とでは役割が異なり、「プレーに迷いがある」と岡崎本人が語っている。そのレスターでも2016-2017シーズン序盤戦は出場機会が激減した。その間に代表でも大迫勇也が1トップに定着し、2列目両サイドでは原口元気や久保裕也が活躍を見せた。
「日本はもうアジアで圧倒的な力を持つチームじゃなくなった。そういう時期を迎えている。そんななかで若い選手が活躍してくれたのは大きい。日本代表もそういう意味では過渡期なのかもしれない」と、岡崎は8月上旬に語っていた。
南アフリカW杯最終予選での自身がそうであったように、若手の成長を実感していたのだろう。思えば南アフリカW杯の出場を決めたウズベキスタン戦で、唯一のゴールを決めたのは岡崎だった。
それでも“世代交代”とささやかれる現状を、このように打ち消した。
「監督のサッカーにフィットしたのが大迫、久保、原口だった。でも僕自身はこのチームでまだ、自分の力を出し切れていないから」
それは言い訳ではなく、自分を責めるような発言でもあったし、同時にハリル体制での自身の可能性を示す想いでもあった。