野ボール横丁BACK NUMBER
満塁弾の応酬とスクイズ失敗、強気。
選手が監督を超えた盛岡大付は強い!
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/08/19 14:30
独自の打撃改革を進めており、常に「5点以上とる野球」を目指すという、盛岡大附の関口監督。
「うちのいいところを、どんどん出していこう」
8回表には好投していた三浦瑞が四球を選び、そこに代走・三浦奨を送る。その三浦奨は盗塁を決め、チャンスを演出した。
「もう、うちのいいところを、どんどん出していこうと思った」
1点ビハインドのまま9回表を迎える。
打順は、ここまで本塁打のない3番・植田拓から。
関口は「自信を持って行け!」と植田の背中を押した。すると、その植田がバックスクリーン左に同点弾を放り込んだ。植田はこう感謝する。
「監督の言葉で打てたようなものです」
「ホームランは、シンボルマークのようなもの」
同点のまま延長に入り、10回表、1点を勝ち越し、なおもノーアウト二、三塁で再び植田に回る。
ボールカウントは3ボールとなったが、関口は、もう迷わなかった。
「思い切り行け、と。『待て』とかは考えなかった」
植田のフルスイングによって舞い上がった打球は、今度はバックスクリーンに飛び込んだ。
強打が売りの盛岡大附の主力打者を迎えると、相手チームの外野はフェンスギリギリまで下がる。関口は、極端なシフトについて、こう話していた。
「嫌なもんですよ。いい当たりが、捕られてしまったり……。だから、前に落とせばいいんだ、って。今年のチームに長打は求めていない」
しかし、この日、盛岡大附の放ったホームランは、そのシフトの上を越えていった。
らしい勝ちっぷりに、関口の口は滑らかだった。
「うちにとってホームランは、シンボルマークのようなもの。出ると、それで一気に乗って行ける。今日は選手に迷惑をかけっぱなしだった。もう任せた方がいいですね。余計なことはしない方がいいかも」
選手が監督を超え、それに監督が気づいたチームは、強くなる。