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二松学舎監督からエースへの労い。
「なんか、無理やりだったかな」
posted2017/08/18 17:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
「甲子園は独特のヒーローの選び方をしますね」
初戦で明桜に14-2と快勝した後、二松学舎大付の監督・市原勝人は、こうしみじみと語ったものだ。
細身で長めの白髪がトレードマークの市原は、サッカー選手のようであり、音楽家のようでもある。
明桜戦の立役者は、東東京大会でチーム最低打率だった4番・永井敦士だった。第1打席でショートへの内野安打で出塁すると、その日は、5打数5安打と大当たり。市原は、こう振り返った。
「どうであれ、やっぱり甲子園の1本は特別なんでしょうね。1本打った後は、打てる雰囲気がぷんぷんしてた。監督は無力だなと思いました」
今年のチームは期待されながらも、なかなか結果が出なかった。昨秋は2回戦で早々に敗退し、春は準々決勝で日大三に1-16で大敗した。1年夏から活躍した大エース・大江竜聖(現巨人)の1つ下の代で、「ずっと日陰だったせいかな」と市原は分析する。
「こういうミスをすると、こうなっちゃうよ」
しかしこの夏、市川の言葉を借りればチームは「大変身」した。東東京大会は、ほぼ危なげのない勝ちっぷり。打線は全6試合で二桁安打を記録し、左のエース市川睦も35回を投げ5失点と安定していた。
甲子園でも、初戦はその力をそのまま出せた。
「私が監督として初めて甲子園に来たとき('02年の選抜大会)は、1点を取るのが大変でね。それをこのチームは簡単に取っちゃった。わからないもんですよね……。ただ、まだまだ伸びそう。先輩たち(夏の選手権大会は'14年に初出場し、1勝)を、超えていっちゃいそうですよね」
しかしこの日、3回戦の三本松戦では、ほとんどいいところがないまま2-5で敗れた。
「こういうミスをすると、こうなっちゃうよ、ということを教えられた気がする。ちゃんと反省しなさいよ、と。甲子園は、優しいところでもありますし、厳しいところでもありますね」