野球善哉BACK NUMBER
あんなに不器用だった盛岡大付が……。
甲子園で試合巧者になる方法とは。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/08/16 15:00
7回、大里のタイムリーで4点目を手にした盛岡大付。しかし大きかったのはその前に奪っていた3得点だった。
先発に代打→代走で貴重な追加点を呼び込んだ。
6回裏、松商学園は4番・藤井大地のソロ本塁打で1点を返す。ただ、本来狙ったはずの機動力を生かしつつ、藤井の長打に懸けるという理想形を作れなかった。
逆に7回表、盛岡大付が攻勢を仕掛ける。好投の三浦瑞に対して代打・菜花友紀を送り出したのだ。菜花が内野安打で出塁し、1番・林の二塁打で代走・三浦奨がホームイン。続く大里昴生にも適時二塁打が出て2点を追加。4-1と試合を大きく動かした。
相手の機動力を防いできた三浦瑞の交代は賭けだったが、盛岡大付の指揮官・関口清治監督に迷いはなかったという。
「7回裏の松商学園の攻撃は左打者が続くので、もう1イニングというのも考えました。ただ、そこは勝負に出ようと思いました。代打の菜花が出塁したので代走も使って、選手をフル起用して賭けようと」
盛岡大付は過去に1試合5併殺の記録を作ったが……。
関口監督は、終盤の松商学園の反撃にも慌てなかった。7回裏無死二、三塁のピンチでも前進守備を敷かず、1点を献上する代わりに1アウトを確実に積み重ねて、大量失点の可能性を摘みとっていった。
相手の長所である機動力野球に対して、2点差以上を作れたのが勝因の1つと言えるだろう。もしこれが1点差なら、クイックが上手くない平松竜也を2番手として登板させることにリスクがあったが、2点差以上のリードなら、機動力を使われてもそう怖くないと踏んだのだ。
盛岡大付は過去に1試合5併殺の珍記録を作ってしまうなど、甲子園では上手く試合を運べないチームだった。甲子園初勝利を果たしたのも夏8回目の出場でのことだった。今年のチームは県大会打率.395、10本塁打と誇っているが、以前の課題を修正し、試合巧者ぶりを身につけているのも見逃せない。