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F1ライセンス取得条件は厳しすぎ?
リザーブドライバー不在に見る問題。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2017/08/13 08:00
F2ハンガリーGPで優勝を飾り、そのままザウバーでF1合同テストに参加した松下信治だが、F1デビューへの道はまだ険しい。
「18歳以上で、有効な自動車運転免許所持」の義務化。
スーパーライセンスとは、4輪モータースポーツを統括するFIA(国際自動車連盟)がF1に参加するための資格として設けている、特別なライセンスだ。かつては盛んに行われていたテストで、ある一定の距離F1マシンを走りこめば取得できたのだが、現在は事実上テストが禁止されたために、取得が難しくなっている。
実は2016年から、この規則がさらに厳しくなった。それは前年にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が史上最年少となる16歳でスーパーライセンスを取得したことがきっかけだった。
世論の批判をかわすため、FIAは下位カテゴリーでの実績をポイント制にして数値化するとともに、取得の条件に「18歳以上で、かつ有効な自動車運転免許所持」を義務付けた。
これによって、スーパーライセンスを所持できるドライバーは大幅に制限されることになった。そのためF1各チームは、リザーブドライバーを準備しておくことが難しくなってしまったのだ。
もうひとつ、今回のディ・レスタの件で浮き彫りとなったことがある。たとえ元F1ドライバーといえども、ほとんどテストする機会がないと、いざ代役として出走してもとても戦える状態にはならないのだ。
グランプリ期間中のサードカー復活を見直してほしい。
リザーブドライバーがレースに出場する機会は、契約中に1回あるかないか、という程度。つまりほとんどのリザーブドライバーは、基本的にレースに出場しないのをわかっていて、サーキットで待機していることとなる。それが、多くのチームがリザーブドライバーと契約していなかったり、レースに毎回は帯同させていない遠因となっている。
そこで見直してほしいのが、グランプリ期間中のサードカー(3台目のマシン)の復活だ。現在テストが制限されているのは、コストの問題からである。もし、グランプリ期間中にサードカーを走らせることができれば、サーキット使用料はなくなり、移動費も追加の数人のメンバーだけですむ。あとはスーパーライセンス取得の条件に、「サードカーで一定のペースと距離を走り込むこと」という一文を復活させればいい。
こうすれば、現在F2のタイトル争いから脱落して、ポイント上はスーパーライセンス取得が難しくても、才能があると言われる若手をF1で試すことができるだろう。そしてチームがその才能を認めれば、F1ドライバーとしての道を開くこともできる。