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セナ対ピケ、ホンダのバトン優勝……。
退屈に見えて名コースのハンガリーGP。
posted2017/07/28 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
AFLO
いまから31年前の1986年、東ヨーロッパで初のF1、ハンガリーGPが開催された。
時は東西冷戦が続く時代。鉄のカーテンをこじ開けたのは、前F1会長兼CEOのバーニー・エクレストンだった。
旧社会主義国でのイベント開催には幾多の困難が伴ったが、週末には約20万人の観客が詰めかけ、イベントは大成功。以後、30年以上に渡って、F1の夏の風物詩として、カレンダーにその名を刻み続けている。
今年は7月30日に決勝が行われるハンガリーGPの舞台であるハンガロリンクは、「ガードレールのないモナコ」と称されるように、曲がりくねったレイアウトのコースだ。オーバーテイクが困難なため、ドライバーからの評判は芳しくない。だが、それゆえ、さまざまなドラマが生まれてきたという歴史がある。
伝説の「セナが真っ向勝負で敗れたシーン」。
初開催となった'86年に、ネルソン・ピケ(ウィリアムズ・ホンダ)が演じたアイルトン・セナ(ロータス・ルノー)へのオーバーテイクもそのひとつだ。
トップを走るセナと2番手のピケ。唯一の追い抜きポイントであるストレートエンドで、イン側を守るセナに対して、ピケはアウトから1コーナーへ進入するという大胆なオーバーテイクを仕掛けたのだ。
ブレーキングでリアが流れたピケは、すかさずカウンターステアをあて、マシンを立て直しながらコーナーリング。この追い抜きは「セナが真っ向勝負で敗れた数少ないシーン」として伝説にもなっている。
その3年後に、マクラーレン・ホンダに移籍していたセナとの勝負を制して優勝したナイジェル・マンセルのオーバーテイクも見事だった。
予選で12番手に終わったマンセルだったが、レースではフェラーリのコーナーリング性能をフルに生かした走りで次々とオーバーテイク。トップのセナの背後まで迫ると、セナが周回遅れのステファン・ヨハンソンのマシンに詰まったのを見逃さず、一気にパス。
“スリー・ワイド(マシンが3台横並びの状態)”でのオーバーテイクは、いまも語り草となっている。