ニッポン野球音頭BACK NUMBER
ベイスターズ捕手陣の父親的存在。
光山英和コーチの求心力、関西弁。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/08/14 11:30
得点が入れば筒香らとともに喜びをともにする。光山コーチ(中央)の果たす役割は、地味ながらとても大きい。
戸柱の心を支えた「ミスした時こそ平常心でいろ」。
ルーキーイヤーの昨シーズンを主戦捕手として乗り切った戸柱もまた、「ミスした時こそ平常心でいろ」という光山の一言を拠りどころとしていた。戸柱27歳、嶺井26歳、高城24歳という若いキャッチャー陣にとって光山は、まさしく父親のような存在だ。
光山は言う。
「ぼくは、誰が柱とか、誰がレギュラーとか、いまも思ってなくて。全員、高城も西森(将司)も含めて競争させてあげたい。だから、ラミレス監督にも言ってるんですけど、“今日勝てるキャッチャー”を選んでほしいっていうのはあります。最終的に勝った人がレギュラーというだけの話なんでね。無理やりレギュラーをつくりたい、とはぼくは思ってないです」
競争「させてあげたい」の言い回しに親心がにじむ。試合数の多寡にかかわらず、平等の愛情をそれぞれに注いでいる。
そして、捕手を固定せず競わせる方針は、ここまでのところ功を奏していると言えるだろう。戸柱の加入は刺激となり、嶺井や高城もバッテリーエラーの多発した2015シーズンから着実な成長を見せてきている。
打たれ、負ければ、結果論で槍玉にあがるのはキャッチャーの宿命だ。CS圏内を維持し、もはや弱小とは言われない時代を迎えて、その重圧は増している。
リードが悪い、ミスが多いと批判にさらされ自信を失いかけた時、よき理解者が傍らにいる効果は大きい。豊富な経験からくる含蓄ある言葉をもち、眼光に優しさと厳しさを湛えた光山の存在は、肉体はもとより精神的にも厳しい職にある若者たちを温かく包んでいる。