“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
流経柏と日大藤沢はなぜ走れたか。
酷暑のIHを勝ち抜いた2校の共通点。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKyodo News
posted2017/08/07 12:20
両校優勝の経験はあるが、単独では初となる流通経済大柏。ユアテックスタジアムで歓喜を爆発させた。
後半に入って名将・本田監督が一気に勝負に出た。
均衡した展開となって両チームとも決定的なチャンスを作れず前半を終えたが、そこからギアを上げたのは流通経済大柏だった。
過去に指揮を執った習志野高時代を含め、5度の全国優勝を経験している名将・本田裕一郎監督が一気に勝負に出たのだ。
「ハーフタイムに“前半0-0で良かったじゃないか”と声をかけました。選手たちにとっては、守備の意識が強くてストレスが溜まる展開だったと思うのですが、0-0で折り返してくれたからこそ、“後半は勝負に出るからね”と伝えることが出来た。前半のように相手をびっちりマークしなくていいし、少しマークを緩めても良い。その分、前に行こうと話をしました」
マンマークを解除し、積極的なビルドアップと両サイドバックの攻撃参加で、日大藤沢に襲いかかったのだ。
我慢比べの展開が続く中で、熊澤が値千金の決勝点。
この策に対して、日大藤沢も集中力を切らさず、球際で一歩も引かずに応戦した。流通経済大柏はその堅い防壁に苦しみ、我慢比べの展開がしばらく続いたが、均衡は66分に崩れた。
流通経済大柏が得たFKの展開から、交代出場の2年生MF熊澤和希が鮮やかなトラップで抜け出すとGKと1対1に。熊澤が放ったシュートは、日大藤沢GK竹内暢希がファインセーブ。流通経済大柏はビッグチャンスを逃したかに見えた。
しかし、そのセーブしたボールが左タッチラインを割ると、流通経済大柏はすかさずスローインで再び熊澤にボールを渡す。再びチャンスが巡ってきた熊澤はGKの位置を冷静に見て、逆サイドネットにシュートを突き刺したのだ。
我慢比べに勝利したのは、流通経済大柏だった。
熊澤のゴールで勝負は決した。ここからスコアは動くことなく1-0のままタイムアップし、流通経済大柏が悲願を成就した。