プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンCがSB3人獲得に185億円!
ペップの高い要求に応える選手は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/07/30 11:30
プレシーズンマッチではモウリーニョ監督率いるユナイテッドに0-2で敗戦。ペップ体制2年目のシティは巻き返せるか。
30代の4人をすべてお払い箱に。
ただ、今回ばかりは別の話だ。バカリ・サニャ、ガエル・クリシ、パブロ・サバレタが契約満了でお払い箱になり、アレクサンダル・コラロフが控え扱いを嫌ってローマへと移籍した。去った4名がそろって30代だったことから、メディアでは「リジュベネーション(若返り)」とも表現されるが、マンCを「グアルディオラ化」するための改造ということで“グアルディオレーション”という造語を当てたい。
この“グアルディオレーション”は、1年目の苦戦にチームがめげていないことも意味する。守りを固めて辛抱強くカウンターを狙うチームが多い中でも、グアルディオラは後方から足元でつないで攻撃を組み立ててきた。これからも、失ったボールは即座に奪って攻め勝つサッカーを貫く覚悟のようだ。
そのスタイルをマンCに植えつける上で、SBは難易度の高いポジションだ。なぜなら単なるオーバーラップだけでなく、ビルドアップ時にはボランチやその手前インサイドの位置にも入る戦術理解力を求められるから。
相手ペナルティエリアに近づく際には、引いて守る敵を崩す手段を増やすべくプレーメイカーとも絡む。ケビン・デブライネやダビド・シルバらがいる2列目には、新たにベルナルド・シウバが加わっているが、彼らと呼吸を合わせられるだけのセンスと視野、ボールコントロールも要求される。もちろん、後方に残したスペースを突かれるリスクが常に伴うことから、咄嗟に戻って守備に入る走力を備えていることは大前提となる。
グアルディオラの希望に沿う選手はいなかった。
ところが昨季のマンCには、ペップ本人の言葉を借りれば「限られたスペースを使って攻め、広いスペースを守らなければならない」チームに適したSBはいなかった。指揮官が「アップダウンを繰り返せる持ち駒がない状況に適応するしかない」と嘆いたのは昨年4月のこと。それ以前からグアルディオラ流SBの動きは封印されていた。
後方のリスクを考慮し、守備力の高いフェルナンジーニョを起用して、肝心のビルドアップがスムーズさを欠いてしまった試合もある。ゴール前に侵入されると、新GKに抜擢したクラウディオ・ブラボの弱点であるハイボールと1対1のプレーによって、失点の危険をより一層高めた。グアルディオラにとっては、監督として初めてタイトルを獲れずに終わった結果よりも、自分流の戦い方ができなかった内容が最大の無念だっただろう。