ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
テレビ局の利害、会場、ベルト……。
田口と田中の統一戦を阻む要素とは。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2017/07/24 11:55
WBOライトフライ級王者の田中恒成(左)と、WBA同級タイトル戦で6度目の防衛に成功した田口良一(右)。
5月にいい試合をした田中に負けてはいられない!
参謀役の石原雄太トレーナーは「減量がきつかったのでは?」という問いに次のように答えた。
「試合前に両脚がつりそうになったんです。いや、違和感と言うんでしょうか。だから足は心配だった。ただ、ベストとは言えないまでも、よく動いてくれたと思います」
田口の気迫が、わずかなコンディションの乱れを凌駕した。
5月にいい試合をした田中に負けてはいられない。
そもそも統一戦が実現した場合、前評判は元アマエリートで、プロで無敗のまま2階級を制した田中の優位に傾くはずだ。強さをアピールしなければならないのは田口だった。
受けに回った時間はわずかだった。「最初からいく。8ラウンドでスタミナを使い果たしてもいいと思った」の言葉通り、初回中盤からバレラをロープに押し込み、何度もボディブローを叩き込んだ。
バレラの粘りに失速しかけたシーンもあったが、田口は燃料切れになることはなく、そのたびにエンジンをふかし直して挑戦者に迫った。そして9回、バレラを滅多打ちにしてストップ勝ち。「いい形で勝てて、やっと(統一戦の)土俵に立てた」。試合後に本音が口をついた。
「どちらが強いか、拳を交えてはっきりさせよう」
2人が統一戦にこだわる理由はシンプルだ。
それは「どちらが強いか、拳を交えてはっきりさせようじゃないか」というボクサーの根源的な欲求である。
そして多くのファンが考える「どちらが強いか、はっきり見せてくれ」、あるいは「同じ階級にチャンピオンは2人いらない」との思いにこたえることが、プロとしての役目だと自覚しているからだろう。
1960年代に世界チャンピオンがこの世に1人ではなくなってから、統一戦の話がいつの時代もついてまわった。チャンピオンがともに日本人同士であればなおさらだ。
1970年代の西城正三と柴田国明にはじまり、同じ階級に2人の王者がいるときは、必ず統一戦の話題が持ち上がった。