ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
テレビ局の利害、会場、ベルト……。
田口と田中の統一戦を阻む要素とは。
posted2017/07/24 11:55
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBA世界ライト・フライ級王者の田口良一(ワタナベ)が23日、東京・大田区総合体育館で同級1位のロベルト・バレラ(コロンビア)を下して6度目の防衛に成功した。
試合後、テレビ解説を務めたWBO世界同級王者の田中恒成(畑中)がリングに上がり、2人でそろって対戦をアピールした。
国内史上まだ一例しかないという「統一戦」にかける両者の思いとは─―。
2人の王者の統一戦への熱い思いが、田口の3試合ぶりのTKO勝ちを生み出したように思えた。先に統一戦を呼び掛けたのは22歳の若き2階級制覇王者、田中だった。
田中は5月20日、名古屋市の武田テバオーシャンアリーナで世界タイトルマッチを行った。16戦全KO勝ちのパーフェクト・レコードを持つアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を下した直後、リング上で解説席にいた田口を呼び、「今年中に僕とやりましょう!」と呼びかけ、さらに畑中清詞会長の了解まで取り付けたのだ。
ファンの前で既成事実を作るパフォーマンスは、思い付きでやったわけではない。田口にその気があることをよく知った上でのラブコールだった。
前戦の不調から、王座陥落もささやかれていた田口だが。
「両想い? 恥ずかしながら」
田口が6度目の防衛を成功させたあと、記者に囲まれた田中は、そう答えて満足そうな笑みを浮かべた。
田中の熱烈な“求愛”にリングで答えたのが田口だった。
スイッチを繰り返し、ゲームメイクのうまいバレラとの試合は、常に前に出るタイプの田口が空転させられる、という予想もあった。前回のV5戦がドローだったこと、試合前から田中戦がクローズアップされていることも不安材料になりえた。王者が足をすくわれるのは、えてしてこういうときなのだ。
そして、ゴングと同時に動き出した田口は決して万全には見えなかった。動きが軽快とは言えず、バレラに攻勢を許した。