ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
テレビ局の利害、会場、ベルト……。
田口と田中の統一戦を阻む要素とは。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2017/07/24 11:55
WBOライトフライ級王者の田中恒成(左)と、WBA同級タイトル戦で6度目の防衛に成功した田口良一(右)。
日本国内で、統一戦は長きにわたり実現しなかった。
2013年に日本がWBA、WBC、IBF、WBOの4団体を認めてからは、同じ階級に複数の日本人王者がより誕生しやすくなり、現在のライト・フライ級はWBCの拳四朗(BMB)を入れて3人の日本人世界王者が君臨する。ミニマム級、フライ級、スーパー・バンタム級も複数の王者が存在する。
残念ながら、国内で統一戦は長きにわたり実現しなかった。
日本人選手同士による統一戦は、2012年の井岡一翔(井岡)と八重樫東(大橋)の一例だけ。相手が外国人王者となると、過去に一度もない。
1984年にWBA王者だった渡辺二郎がWBC王者パヤオ・プーンタラット(タイ)に挑戦した例(渡辺はWBA王座はく奪)と、2010年にWBC王者だった長谷川穂積がWBO王者のフェルナンド・モンティエル(メキシコ)と対戦したケース(WBO王座はこの試合にかけられなかった)は事実上の統一戦だが、この2試合を含めても過去に3試合だけ、ということになる。
2人の王者に付くテレビ局が違う場合、どちらで放送?
理由はいくつかある。
世界戦を放映するテレビ局が違えば、どちらの局が放送するのか、というハードルがある。試合会場をどこにするのかというところでも、両者の利害がぶつかりかねない。そしてもちろん、ベルトを失うリスクは何よりも大きな障壁であろう。
多くの場合、たとえ選手が望んでも、プロモーター側、つまりジムの会長のレベルで話がまとまらないことが多い。
こうして選手は多くを語らずその思いをグッと飲み込み、ファンは「な~んだ、やっぱやらないんだ」とそっぽを向いてしまうのだ。
そうした状況を選手自身で乗り越えようとした田中の行動力と、それにこたえた田口のパフォーマンスは特筆に値する。