マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校球児がテレビで野球を見ない?
「他人の野球」に興味がない子供たち。
posted2017/07/19 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Shigeki Yamamoto
取材で野球部におじゃますると、いつも監督さんに尋ねることがある。
チームで1番の「野球小僧」は誰ですか?
すると、たいていの監督さんはとても嬉しそうな顔になって、
「野球小僧ですか……? うーん、誰かなぁ……」
と、一度頭の中に何人かの顔が浮かんでいる顔になってから、うん、あいつしかいないな! と1人に決めた顔になり、ある選手の名前を挙げてくれる。
どんなふうに野球小僧なんですか?
さらにその“人間像”を具体的に訊きたくてそう尋ねると、監督さん、今度は足を組み直したりなんかしてから、
「あいつはですねぇ……」
そんなふうに語り始める時の監督さんの顔を見ていると、いつもそういう顔でグラウンドにいれば、選手たち、もっと上手くなるんじゃないのかなぁ、などと、“大きなお世話”なことを考えてしまったりするのである。
「あいつはねぇ、とにかく野球が好き。毎日、いちばん最初にグラウンドに出てきて、いちばん最後までグラウンドにいる。ジッとしている瞬間がないですよ。いっつも何かしている。感心しますね」
確かにそういうのも十分野球小僧なのだが、実は私はそういうとき、いつもちょっと違った“野球小僧”を期待したりしている。
練習は一生懸命やる、しかし……。
5、6年前ぐらいだったか。
これは、別に不名誉な話ではないので、お名前を明かしてもよいだろうが、横浜隼人高(神奈川)の水谷哲也監督と話していた時に、こんなことがあった。
「私は子供の頃から、プロ野球12球団の選手の名前から、背番号から、出身校から、身長・体重、右投げか左投げ……もう全部覚えてましたよ。愛読書、プロ野球選手名鑑。ヒマさえあればいっつも眺めて、もうずっと高校生になっても毎年すっかり暗記して、まわりから“歩く選手名鑑”とか言われてましたから」
愉快そうにそんなふり返りをされてから、
「でも今の子って、そういうヤツ、ぜんぜんいなくなりましたね。一生懸命練習するっていうのは、自分たちの頃よりずっと一生懸命やってると思いますよ。でも、そういう意味の、“虫”みたいなヤツね……いなくなりましたよねぇ」
ひどくさみしそうにおっしゃった。