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最後の夏……出場辞退はしたくない!
高校の「連帯責任」はもうやめよう。 

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小塩康祐

小塩康祐Kosuke Ojio

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/07/14 12:00

最後の夏……出場辞退はしたくない!高校の「連帯責任」はもうやめよう。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

教育の現場における裁量の幅が、昔と現在とでは大きく変わってきている。時代に即した教育方針が、いま部活動の場でも求められているのではないか。

時代と共に変わってきた、協会による処分。

 もっとも最近は、日本学生野球協会も処分を決定するに際し、「不祥事に関わった人数や状況」、他の事例とのバランスを考慮しているようです。

 また、可能な限り、最後の夏の大会に出場できるよう配慮した処分を科すようにしており、時代の流れと共に、協会としては他の部員に影響を及ぼすような処分を科さないようになっているといえます。

自主的な処分、「出場辞退」や「自粛」について。

 仮に協会からの処分がなかったとしても、各学校や各部が自ら、出場辞退、活動自粛といった処分をすることもあります。

 しかし、学校も「連帯責任」を原則として採用すべきではないと思います。

 日本国憲法の精神に則り2011年に公布された「スポーツ基本法」(元スポーツ振興法)は、その前文で「スポーツをすることの権利性」を示唆してあり、「連帯責任」を課すことそのものが、不祥事に関わっていない生徒の「スポーツをする権利」を侵害することになりかねません。

 上述の通り、協会も最近では「連帯責任」を極力、課さないようになってきており、学校側による(名目的なものにしろ)自主的な出場辞退や活動自粛は極めて限定的な場合にすべきと考えます。

 具体的には、部員の複数が直接的に不祥事に関わっており、かつ、間接的に関わった(例えばその不祥事を知っていて黙認していた等)他の生徒にも処分をする必要がある特殊な場合にのみ「連帯責任」を課せると考えます(文部科学省「スポーツを行う者を暴力等から守るための第三者相談・調査制度の構築に関する実践調査研究協力者会議報告」参照)。

 例えば――「部員30人の野球部の部室で、複数名が恒常的に喫煙をしていて、他の部員もそれを知っていて黙認していたような場合」は、活動自粛という処分もやむを得ないと考えます。逆に、部員1人が傷害事件のような重大な犯罪をした場合(他の部員の誰も知らない場合)、連帯責任を他の部員にも科すのは不合理だと思います。

 したがって、部員1人が万引きをしており、それを他の部員も認知していなかった場合は、部全体が活動自粛することが他の部員の「スポーツをする権利」を侵害することになりかねません。

 よって、冒頭の質問のような場合には、部として又は学校として予選大会出場を辞退すべきでないと考えます。

【次ページ】 顧問の先生、学校の先生へ伝えたいこと。

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