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西武が掬い上げた水口大地は163cm!
「野球を辞めようと思った年に」
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2017/07/11 07:00
内野はどこでも守れ、外野の守備に挑戦するなど、西武には欠かせないユーティリティープレーヤーへ成長している。
「とにかく今は、ウザい選手になりたい」
そのせいか、入団直後から水口の発言は一切、ブレていない。幾度も目標を尋ねたことがあったが、いつも返ってくる答えは同じだった。
「野球をやめようと思った年に西武にとってもらったので、なんとしてもチームの力になって、優勝に貢献できる選手になることが目標です」
プロ入り5年目の今シーズンも、水口を突き動かすのはその「チームへの思い」だ。
「とにかく今は、ウザい選手になることを目指しています。相手に球数を投げさせる打者になることです。簡単に三振で終わるのではなく、エラーでもなんでもいいから塁に出ること。ヒットを打てればそれに越したことはありませんけど、とにかく自分にできることをやろうと思っています」
水口が走っている時は、100%近い確信がある時。
得意としている走塁では、今シーズンも随所で次の塁をねらう果敢なプレーを見せている。ライオンズ黄金時代がそうであったように、次の塁へと果敢に挑む姿勢は、時としてチームに勢いを与える。特に連敗が続いた6月下旬から7月にかけては、ホームへの送球の間に、当たり前のようにセカンドを陥れる水口の姿がチームの士気を高めた。
「勝負所での走塁は勝敗にかかわるので、もちろん思い切りの良さは持っていなければいけないんですけど、100%成功するという状況が揃わない限り僕は行きません。逆に行っているときは、自信があるときです」
果敢に次の塁をねらう、と言葉で言うのはたやすいが、勝敗に関わる場面こそ冷静な判断が重要になる。「大事な場面では成功率が100%に近くないと冒険はしない」と語る水口の姿勢は、思い切り行くだけが勇気ではないという、走塁のスペシャリストの誇りが垣間見えた。
そして、今シーズン、就任した辻発彦監督との出会いも、また水口のチーム愛を加速させる出来事となった。
「中学生のときに父親と一緒にスポーツ用品のカタログを見ていたんですよ。そうしたら辻さんのモデルのグラブがあったので“有名な人なの?”と聞くと、守備の名手で“辻とじ”という、辻さんの名前がついた製造方法まであるって父親が教えてくれました。すごい人なんだなぁと思った覚えがあります」