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西武が掬い上げた水口大地は163cm!
「野球を辞めようと思った年に」
posted2017/07/11 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
選手たちの輪の中に混じると、ひときわ小さく見える163cmの体格。話を聞こうと待ち構えていても、ちょっと目を離した隙に姿を見失い、すでにロッカールームに引き上げてしまっていることもしばしばある。広いグラウンドの中で背番号00を追うのは一苦労だ。
そんな小兵、水口大地は転機となるかもしれないシーズンを送っている。
今シーズン、開幕一軍こそ逃したものの、4月29日に昇格してからは32試合に出場し3割2分4厘の打率を記録(7月7日現在)。50mを5.8秒の俊足と、堅実な守備にはもともと定評があり、これまでも一軍では主に代走、守備固めで起用されてきた。
しかし、今シーズンは意外にも打撃を期待されての登場が増え、代打でもたびたび登場している。
「最初、代打で行くぞと言われたときにはちょっと驚きましたけど、今はもう、どんな場面で出ても対応できるようにしっかり準備を整えています」
打席に立つときの心構えを聞くと、こう語った。
「いちばん悪いことをイメージしてから打席に入ります。たとえばセカンドにランナーがいるときは、ショートゴロ、サードゴロでは三塁に進めないので、それだけはダメだな、とか……。ヒットを打てなくても、何が何でもチームに貢献したいので、少しでもチームにとっていい形で自分の打席を終えたいんです。ランナーを進めることができれば、ランナーがセカンドにいるよりサードにいるほうが、相手のピッチャーが感じるプレッシャーが違うと思いますから」
野球を辞めようと思っていた年に、西武から指名が。
最悪の結果を頭に入れて臨むのは、「チームに貢献したい」という思いからだ。
水口は大村工高から独立リーグを経て2012年、ドラフト育成枠1位で西武に入団した。2015年7月23日に晴れて支配下登録され、背番号は3桁から2桁に変わった。
最初に入団したチーム、長崎セインツが経営難から活動休止となり、救済ドラフトによって香川オリーブガイナーズに移籍。実は水口は2012年を限りに野球を辞める覚悟を決めていた。しかし辞める直前の秋、西武の育成ドラフトの指名を受けたのである。
救われた、と思った。