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韓国代表の座は「毒を盛った杯」。
恒例化した監督交代は何が原因か。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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posted2017/07/10 17:00

韓国代表の座は「毒を盛った杯」。恒例化した監督交代は何が原因か。<Number Web> photograph by AFLO

まさに針のむしろの状態だったシュティーリケ前監督。韓国代表を率いて英雄視されたのはヒディンク元監督くらいかもしれない。

希望と沿わない外国人監督を迎え、結局は解任。

(1)第1希望ではない外国人監督を迎え、結果的には成績不振で解任

 このパターンが多い。'02年ワールドカップ後のコエリョ、ボンフレーレ、そして今回のシュティーリケの事例もそうだ。

 '02年後はメディアの世論調査でエメ・ジャケ(フランス)の待望論が起きたりもしたが、結局交渉のスタートが遅れた。'04年6月のボンフレーレ就任の際は前任者の途中解任により、そもそもフリーの候補者が少なかった。'14年9月のシュティーリケ就任時も、大韓サッカー協会の第1希望はオランダのファン・マルバイクだった。

 韓国が外国人監督に指揮を依頼する際の根底には、かつてはびこった「学閥・地縁による偏った選手選考」を避けてほしいという願いがある。シュティーリケ解任を最後に自らも辞任したイ・ヨンス大韓協会技術委員長は今回の外国人監督選任理由をこう明かした。

「外国人監督の選任は、国内のユース世代にもいい影響を与えると判断した」

 外の視点からフラットに若い才能を抜擢してほしいという願いだ。

 しかし、メディアは結果に手厳しかった。今回のシュティーリケ解任の際は大韓サッカー協会側と6月13日のカタール戦後の帰国便で十分に議論し、前監督は「去就については協会側の意思決定を受け入れる」と話していたという。しかしメディアからは“袋叩き”状態だった。カタール遠征中、「終始笑顔はなく、メディア関係者とすれ違う際に怯え、隠れるようなしぐさもあった」と、オフタイムの様子さえ詳細に報じた。

「ソン・フンミンがいて、シリア戦に勝っていれば」

 前出のイ・ヨンス委員長は、“シュティーリケの結果に対する後悔”についてこう口にしているが、すべては後の祭りだ。

「残念なのは2016年9月6日の最終予選シリア戦の結果だ。中立地のマレーシアで行われたゲームにソン・フンミンがいなかった。彼をリオ五輪代表に選びたかったのだが、トッテナム側が出してきた条件は『9月の最終予選の2試合目に出場させない』ということだった。この話をシュティーリケ監督に話した際、頭を抱えていた。決定にも時間がかかった。もしシリア戦にソン・フンミンがいて、その試合に勝っていればもう少し楽に最終予選を戦っているのではと思う」

 イ・ヨンス委員長は最後にこうも口にした。

「後任には韓国人監督を推薦したい。時間がないからだ」

 過去の監督もメディアに追われるように韓国を去っている。コエリョは'02年時に成功した3バックを捨て、4バックの導入を試みたが失敗。'04年4月に大韓サッカー協会でコエリョの去就を論じる会議を開かれた際には、横の記者室ではすでに解任の原稿を準備していたという。

【次ページ】 韓国人監督を迎えても、内輪揉めというパターン。

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