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韓国代表の座は「毒を盛った杯」。
恒例化した監督交代は何が原因か。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byAFLO
posted2017/07/10 17:00
まさに針のむしろの状態だったシュティーリケ前監督。韓国代表を率いて英雄視されたのはヒディンク元監督くらいかもしれない。
コーチを組織のトップに昇格させても……。
(3)コーチ昇格も失敗
ドイツワールドカップ後に指揮を執ったピム・ファーベックがこのパターン。ヒディンク、アドフォカートの下でコーチを務めた。韓国サッカーを知る人材の登用は「常套手段」にも見えるが、これも上手くいかなかった。もともとコーチとして見られていた人材を、ある日から組織のトップとして扱え、というのは自他ともに難しい点もあっただろう。
リーダーが徹底的に叩かれる、韓国のお国柄。
結局はどんな形でも揉めてしまう。'02年ワールドカップ後から、韓国代表の座は「毒を盛った杯」と言われるようになった。もともとドイツのメディアが形容したものを国内でも引用するようになった。
なぜここまで揉めるのか。昨今のこの国の政治事情にも共通する事態だ。
リーダーが徹底的に叩かれる。あるいは苦しい状況に置かれる、という。
こういう状況になると、日本語にない、ある韓国語の漢字の言葉を思いだす。
「民弊」
ミンペ、と読む。意味は「(官吏の)国民に及ぼす弊害」。転じて「迷惑」の意味にも使われる。
ごくごく大雑把にいうと、共同体意識が強い儒教社会では、トップに立った人材が民衆に迷惑をかけたとみなされれば、徹底的に批難される。根底にはそういった思想があると感じる。先般のパク・クネ前大統領の弾劾の流れでもこの言葉を度々思い出した。
こういった考え方に、軍隊文化が加わる。
成年男子が軍隊で教わるのは「負けは即ち、死」という考え方だ。例えば軍隊では“負けは許されない”という訓練の一環として“ルール無用のサッカー”が行われるという。相手を捕まえようが、ぶつかろうが、叩こうが、勝てという考え方を徹底するためだ。
徹底的に勝て、という教育を受けるから、結果に対するプレッシャーが強烈なのだ。