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日本サッカー協会・田嶋幸三会長が
NSBC受講者と討論した「方策」とは。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byYuki Suenaga
posted2017/07/07 16:00
Jリーグの観客動員を上げる、もうひとつの策。
ただし、98万人あまりの登録選手(2016年度)を預かる競技団体の長だ。現実的な視点も忘れていない。
「10年間で2100億円、年間210億円近くの放映権料が入る前提ですが、それをどう分配するか。
例えばJ1の18クラブに3億円ずつ、J2の22クラブに1億5000万円、J3の17クラブに1億円ずつを分配するとしたら、それだけで約100億円になります。そして試合中継の制作費が、50億円近くかかる。さらに、賞金が年間20億から30億円とすると、外国人選手獲得への補助金は、かなり限られてしまいますし、この金額では今の中国に対抗できません。そこをどうするか。
もしかすると、シーズンの開幕時期をヨーロッパと揃えれば、6月に移籍金のかからない選手を2~3億円で連れて来られる可能性はありますよね。例えば、J1ではこの方策を採って、J2は日本人選手のみで戦い、補助金を別のことに使うという考え方もあるかもしれません。
ただし、僕は海外のスター選手が来たからといって、長期間、何度もスタジアムに足を運ぶ人は、そんなに多くないんじゃないかと思っています。そういう選手から日本人選手が刺激を受けて、本気で、真剣に戦うプレーを見せられたときこそ、みんな観に来る。高校選手権の決勝が満員になるのもそういうところですよね。誰でも、本気で一生懸命戦う姿を見たい。
ヨーロッパのトッププレーヤーたちは、本当に負けず嫌いな選手ばかりです。稀に、それが変な方向に表れてしまって見苦しい部分があるけども、みんなが負けたくないと思っている。そんな試合を、日本でどれだけできるか。それが、僕はJリーグが観客動員を上げるための、1つのカギになるんじゃないかなと思っています」
地域の人から何十年も愛されるような経営を。
この後も、受講者によるプレゼンは続いた。
その1つひとつに、田嶋会長は熱心に耳を傾け、丁寧に意見を述べる。その目は、どこか嬉しそうだった。司会の池田純氏から「Jクラブと親会社との、理想の関係性」について訊かれた際には、こう答えた。
「地域の人から何十年も愛されるような経営をしようという空気が、Jリーグの中にも広がってきているように思います。そういうメンタリティ、ハートを持った人がクラブ経営に関わっていかないと、なかなか強くならないのも事実です」