野球のぼせもんBACK NUMBER
“練習しない”ムネリンから後輩へ。
「真剣に野球で遊ぼうよ、フフフ」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/07/05 07:00
過酷なアメリカ生活を経験した川崎の存在は、今宮健太、上林誠知、福田秀平など若手選手への刺激となっている。
今の川崎には「日本球界の常識」は当てはまらない。
スタメン選手が試合前のシートノックに参加しないことは普通あり得ない。しかし、今年はしばしばそれがある。それが現在の川崎スタイルだ。
「日本球界の常識」は当てはまらない。
別の日にはフリーバッティングをキャンセルした。その試合はナイター翌日のデーゲームだった。メジャーではそのような日は試合前の全体練習は行わず、個別で試合に向けた準備を任される。
川崎はそのスタイルを日本に持ち込んでいるのだ。
野球を楽しむ。Number 930号にて「川崎宗則『自由に楽しく野球を遊ぼう!』」なる拙稿を寄せさせてもらったが、その時のインタビューをはじめ、メジャーから復帰後の川崎は「真剣に野球で遊ぶ」主張を何度も繰り返している。
「フフフ。体を動かさないことが僕の準備だね」
それとともに、川崎は「今の日本の野球は練習をやり過ぎている」という考え方も同じくらい強調している。
「とにかく動かないこと。フフフ。体を動かさないことが僕の準備だね。昔はホントやり込んでいた。ナイターの日もお昼12時から打ち込んで、試合じゃなくて午後2時20分の全体練習に合わせてた。でも、それって練習に追われて、結局練習に逃げていたってことだと思う。今思えば切羽詰まってたよね。今、それをやろうとしたら体が壊れちゃうよ。試合の前には頭の準備をするんだ。そして心を整える」
それはマイナー時代に学んだことだった。長時間のバス移動が続く中、ロクな練習時間も確保できずに毎日のように試合に臨まなければならなかった。「最初は不安だった」。しかし、結果を残さなければならない立場。固定観念を壊し、頭を柔らかくして見つけ出した答えだった。