野球のぼせもんBACK NUMBER
“練習しない”ムネリンから後輩へ。
「真剣に野球で遊ぼうよ、フフフ」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/07/05 07:00
過酷なアメリカ生活を経験した川崎の存在は、今宮健太、上林誠知、福田秀平など若手選手への刺激となっている。
練習に全てを注ぐのではなく、試合で全力を出せるか。
「要は試合でどれだけ全力を出せるか。練習に全力を注ぐんじゃない。僕みたいな“ジジイ”だけじゃなくて、若い選手も同じだと思う。今のホークスは強い。前に僕がいた頃より強いし、去年の(108年ぶりに世界一になった)カブスよりもいいチームだよ。頼もしい、素晴らしい後輩たちばかりだ。このチームはすごく練習している。だけど、一番はメンタル。練習をしなくてもいいプレーを出来ることを覚えられれば、もっといいチームになるしもっといいプレーが出来ると思う。
確かに今の若い選手にやれって言っても無理かもしれない。でも、心のどこかでそういう野球もあるんだと思ってほしい。1週間に1回でもいいから実践してみればいいんだけど。まあ無理か……、いや、無理ではないな。やろうとしないだけ。僕はやってみて、すごくいいことだったからね」
6月に36歳を迎えた。野手ではチーム最年長になる。
川崎のような生き方をする野球選手は稀だ。だが、誰よりもイキイキとしていて、それでいて最も愛されているプレーヤーだ。
怪我をしてもいいやと思っているから、幅が広がる。
無理強いはしないが、後輩たちから訊かれれば自分の経験談を話す場は設けている。
たとえば、36歳になった今だから気づける野球観。これもまた、若い後輩たちに伝えたいことだ。
「もうプロ野球選手になって18年目。これだけやると、何が起きようとも覚悟が出来てくる。突然大きな怪我をするかもしれない。だけど、これだけ長くやると怪我をしたくないなんて言わなくなる。やめる準備は出来ていますよ。だから、そういう覚悟が出来ているから、逆にすごく楽しめるわけですよ。
若いうちは無理。僕だって3年目、4年目の頃は長くやりたい、もっとお金もほしい、活躍したい、もっともっと……とばかり思っていました。だから怪我するわけにはいかない。でも、今は怪我をしてもいいやって思ってるから、ブレーキをかけずに思い切ったプレーが出来る。そうなるとプレーの幅がグッと広がるわけです。ジジイの強みですよ(笑)。それは長く野球をやった選手だけが感じることが出来ること。若い選手たちには今は苦しいこともあるかもしれないけど、年を重ねたらいつかこんな楽しみもあるんだぞって教えてあげたいね!」