プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア最凶の悪童がFAを告発?
高給選手とギャンブル中毒問題。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/07/02 09:00
プレミアの典型的な中小クラブであるストークとサンダーランド。両チームとも昨季の胸スポンサーはベッティング会社だった。
中小クラブの胸スポンサーはベッティング会社だらけ。
FAは、こうした環境に目を瞑ってきたようなものである。その姿勢を問題視するバートンの言い分には一理ある。これもあってかFAとベッティング(賭け)会社とのスポンサー契約は、4年契約の1年目にして解約の運びとなっているが、クラブレベルでのスポンサー事情は「ベッティング天国」さながらだ。
国際的に人気の高いマンチェスター・ユナイテッドやアーセナル、そしてリバプール、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・シティといったビッグクラブは、いずれもメーカー、保険会社、航空会社といった大手企業が胸スポンサーに入っている。しかし、スポンサー料が一桁安い中小規模のクラブのユニフォームには、オンライン系ベッティング会社の名前が増える一方なのだ。
プレミア勢の先陣を切ってベッティング会社を胸スポンサーに迎えたのはフルハムだった。それから15年の時を経た昨季、20チーム中で半数の胸スポンサーがベッティング会社となった。そして来たる2017-2018シーズンも、昇格組のニューカッスルを含む9チームが、胸にベッティング会社のロゴを入れた新ユニフォームを発表済みだ。
またストークの本拠地であるブリタニア・スタジアムが「ベット365・スタジアム」と呼ばれているように、スタジアムの命名権にもベッティング会社が進出している。
2部リーグは「スカイ・ベット・チャンピオンシップ」。
さらに2部リーグは「スカイ・ベット・チャンピオンシップ」という名称になっている。『スカイ・ベット』社はその名の通り、放映権を持つテレビ局『スカイ・スポーツ』と同系列のベッティング会社だ。『スカイ』のアプリで試合結果やニュースをチェックすれば、試合に賭けるためのリンクが張られているのだ。
大半のベッティング会社は、ユーザーの自己申請に基づく賭博禁止を認めている。自覚症状のある「ギャンブル中毒者」が自ら登録すれば、登録日から1年間は賭けが行えなくなる仕組みだ。とはいえ、その冷静な判断を下せる「中毒者」が多いとは思えない。前述の通りサッカー選手には、勝った負けたのスリルが好きな人間が多い。
なおバートンは「W杯のピッチに立ったりゴールを決めたりしても、競馬で賭けに勝った時ほど興奮を味わえないというほどの選手もいる」とも話しており、真実味がある。