プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア最凶の悪童がFAを告発?
高給選手とギャンブル中毒問題。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2017/07/02 09:00
プレミアの典型的な中小クラブであるストークとサンダーランド。両チームとも昨季の胸スポンサーはベッティング会社だった。
「ギャンブル中毒」は冷静な判断力を失わせてしまう。
もちろん、当人がルール違反を犯した事実は動かし難い。筆者は、昨年に行われたバートンの自伝出版記念イベントに足を運んだが、毒舌ジョークを含めてトークからは頭の回転の速さ、賢さが窺い知れた。にもかかわらず本名や自宅の住所、パスポート情報までを登録して賭博を行っていたというのだから、これは「愚か」と言うしかない。
「ギャンブル中毒」が冷静な判断力を失わせてしまったのだろう。公式サイトで明かした賭博歴によれば、'04年からバートンが行なったスポーツ対象の賭博は計15000件を超えている。
とはいえ、この中毒はバートンだけの症状ではない。プレミアでは若くして億単位の金額を稼ぐ「ミリオネア選手」が当たり前となり、賭博で破産に追い込まれるようなケースはなくなってきたが、賭博に関する疑惑や報道は後を絶たない。
例えば4年前には、当時トッテナムのアンドロス・タウンゼント(現クリスタルパレス)が賭博行為により、U-21欧州選手権代表を外れたことがあった。昨季もプレミア最終節チェルシー戦で、背番号にちなんだ「26分」にベンチに下がったジョン・テリーの交代について、オッズ100倍の賭博が絡んでいた疑いが浮上したばかりだ。
グジョンセンはカジノで5000万円失ったことも。
しかも、ネット時代の今ではオンラインでの賭博が当たり前で、移動中のチームバスや遠征先のホテルでも人知れず簡単に賭けられる。
かつてチェルシーに所属経験のあるエイドゥル・グジョンセンは、長期の戦線離脱中に通ったカジノで失った金額は、日本円にして計5000万円。「二度と出入りしない」と反省していたが、ややもすると億単位を賭博で失っていたかもしれない。
今春には匿名だが、50万円弱を賭博で失ったショックからか試合で精彩を欠いた10代の選手が出現し、それに同情するチームメイトのコメントが紹介されていた。なお民間の調査機関によれば、サッカー選手の「ギャンブル中毒」発症率は、一般社会の男性よりも3倍ほど高いというデータもある。