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日本バドミントン強化の立役者。
朴柱奉コーチ「東京でも金メダル」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/06/19 08:00
日本に渡ってから数多くの選手の才能を開花させてきた朴コーチ。東京五輪の舞台でも、その力は必要だ。
コーチ就任ですぐ気づいた、勝敗へのこだわりの薄さ。
「技術が足りないわけではない。スマッシュのパワーもある。でも、国際大会ではいつも負けていた」
なぜだろうか。朴はすぐに気づいた。
「絶対に勝つという気持ちが足りない。勝敗へのこだわりが薄かったのです」
最初に取り組んだ改革は、世界上位との対戦を増やすことだった。それまでの日本選手は強豪が集まる大会にエントリーせず、レベルの低い大会で勝ってポイントを稼ぐことで世界ランクを上げていた。そのため、ランキングで出場枠が決まる五輪には多くの選手が出場しており、アテネ五輪代表は11人。しかし、1回戦を突破したのは女子シングルスの1人だけという惨状だった。
「日本は参加することが目的になってしまっていただけではなく、そもそもランキングに見合った実力がなかったのです」
「もう、ポイント稼ぎのための出場はやめますよ!」
ここが問題だと思った朴は、ナショナルチームの立ち上げで、宣言した。
「目的は参加することではない。成績を出すことだ。もう、ポイント稼ぎのための出場はやめますよ! トップレベルの大会に出て、トップレベルと戦いますよ!」
ナショナル合宿の回数も日数も大幅に増やした。アテネ以前は、空港に集合してすぐ海外遠征に出発していたが、国際大会前は必ず強化合宿を敢行。合宿は朝6時半からのランニングで始まり、午前、午後とハードな練習を課した。
改革に着手するとすぐに、選手の所属チームからクレームが殺到した。
「私の役目は代表チームを強くすることであり、国際大会のための準備です。けれども実業団は自分たちが選手をコントロールするイメージを持っているんですよ。たくさんのクレームが来て、ショックでした。でも私は成績が出なければクビですからね。実業団とはいつもファイティングでした」