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柳田将洋をラクにする新セッター。
男子バレー進化の象徴・藤井直伸。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2017/06/15 07:00
絶対的な高さでは世界に及ばない日本にとって、ミドルを絡めてトスでブロックを翻弄することは極めて重要。藤井直伸の存在は貴重だ。
柳田に“ラク”な状況を作る新セッターの存在。
そんな構図をよそに、若い日本は第1週のオーストラリア戦からの連勝を4に伸ばした。
例えば、高崎大会初戦・トルコ戦の日本のスタメン7人の平均年齢は23.6歳で、石川祐希、柳田将洋、山内晶大以外の4人は、今年代表デビューしたばかりというフレッシュな顔ぶれだった。
人材難と言われて久しいオポジットのポジションには、石川と同じ中央大4年で、元全日本ミドルブロッカーの大竹秀之氏を父に持つ身長201cmの大砲・大竹壱青が入り、パワーあふれるスパイクを決めた。他にもミドルブロッカーの李博、アウトサイドの山田脩造といった新戦力が活躍し、要所では全日本4年目の柳田がスパイク、サーブで勝負強さを発揮してチームを牽引した。
柳田は日本が属する“グループ2”のサーブランキングトップに立っており、スパイクでも60.58%という高い決定率で1位につけている。その柳田は好調の要因を聞かれるたびに、「ラクな状況で打たせてもらっているから」と答えた。
その “ラク”な状況を作り出しているのが、今年初代表の25歳の司令塔・藤井直伸のトスワークである。
クイックを多用することで、相手のブロックがばらける。
藤井は2016-17V・プレミアリーグで8年ぶりの優勝を果たした東レの正セッター。東レではミドルブロッカーを積極的に使うトス回しが持ち味だが、それを全日本でも再現。ミドルの攻撃を使えず、攻撃がサイドに偏って苦しくなるという日本の長年の課題を、藤井が解消した。
「藤井さんはミドルを中心に使ってくれるので、相手ブロックが(ミドルをマークするため)サイドにはガッツリ来ない。ブロックが1.5枚とか、ラクな時は1枚になるのでしっかり決められる。すごく助かっています」と柳田は言う。
国際大会になれば、相手のミドルブロッカーは2m超えが当たり前。さすがの藤井でも、クイックを使うのは「かなり勇気がいるというか、怖かったです」と苦笑するが、だからと言って信条は変えない。
サーブレシーブやディグ(スパイクレシーブ)がネットから離れ、相手が「クイックはないだろう」と思うような場面でも積極的にクイックを使い相手を翻弄。「アタックライン前後くらいの返球なら、クイックが使える許容範囲内なので、全然苦じゃありません」と言ってのけた。