Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
なでしこ逆襲へ、東京五輪3年計画。
高倉麻子「いつもすべてを賭けて」
text by
日々野真理Mari Hibino
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/06/08 07:00
準優勝でも「まぁよかったね」程度の祝福という現実。
'11年のW杯での優勝以降、周りからの女子サッカーに対する期待や見る目も確実に変化しつつある状況です。W杯の決勝は、アメリカ代表の元選手で、監督経験もあるエイプリル・へインリックスさんと一緒に見ていたんですが、日本が優勝したとき、彼女に「優勝おめでとう。でも、これから大変だよ」と声をかけられました。
続けて、「これからみんなが優勝を期待するようになる。アメリカは、そのプレッシャーと、もう30年戦っているのよ」と。確かに、主要大会を振り返ると、アメリカは常にほぼ3位以内を死守しています。しかし、国民は3位では満足しない。もう優勝しか認められないのです。
それほどではないとはいえ、日本も'11年のW杯で劇的な形で優勝を遂げていることもあり、それ以降は準優勝しても、「まぁよかったね」という程度の評価。決して満足はされません。今になって、あのエイプリルさんの言葉の意味を、じわじわと噛みしめています。でも、どんなことがあっても、どんな評価を受けても、地にしっかりと足を着けて、選手とともに進むしかないと覚悟を決めています。
緻密さや献身性は他には真似できないレベル。
女子サッカーのレベルは、世界的に見てもアジアの中でも年々向上していますが、その中で日本はどうあるべきなのか――。アメリカ、ドイツ、フランス、アフリカ勢の強さや速さなどフィジカル的な要素には圧倒されます。しかしながら、日本の緻密さやチームに対する献身性は他国と比べて秀でている。その細やかさは、他は真似できないレベルにあるでしょうし、そこはこれからも日本の武器になることは間違いありません。
また、これからはゲームをコントロールできる選手を育てたいし、集まってほしい。例えば、強豪との試合の中で、「今はやられていても大丈夫、最後はやられないから」とか、ボールを自分たちが支配していても、「ここをやられたら負ける」と選手たちが状況を見極め、点を取りに行けるかどうかが大事になってくる。要は賢さを身に付けてほしいということです。
冷静に試合を分析しながら、自分たちが持っている技術と局面打開の方法を使い分けることができるチームにしたいのです。自分たちで判断をしてピッチの中で良さを最大限に出せる、そういう集団にしていきたいですね。