話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
柿谷曜一朗よ、怖さを失ってないか。
代表復帰のために必要なこととは。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/24 11:00
日本代表次世代のエース、と聞いて柿谷曜一朗を思い出す人は確かに減っただろう。しかし、彼のプレーは決して錆びてはいない。
能力自体が特別落ちたとは思わないが……。
柿谷の力は落ちてしまったのだろうか。
「違和感しかない」と昨年、怪我からの復帰後、手術した足首についてそう語っていた。今もその影響が残っているのかもしれない。だが、パフォーマンス自体は特別悪いとは思わない。得点力が落ちたという声もあるが、2013年とは単純に比較することは難しい。
まず、当時とはポジションが異なる。
21得点を上げたシーズン、柿谷は1トップのFWだった。当時のセレッソは奪ったらとにかく前にボールを出し、あとは柿谷の個人技と決定力に任せるという戦い方をしていた。柿谷もその狙い通り、ゴールを奪うことに専念していた。
今シーズンは、左サイドが主戦場だ。
サイドに置かれているので必然的にゴールが遠くなり、フィニッシュに至る回数が減った。仕掛けるプレーが増えたが、もともと単独で行くタイプではない。大宮戦の3点目は右サイドから清武、柿谷、関口訓充とパスがつながり、関口のクロスを杉本が決めた。柿谷が中央に入っていくことで周囲が連動する、セレッソらしいつないだゴールだった。
これは2点取っていてチームに余裕が出てきたこともあるが、このように柿谷は中央に入って行ったり、周囲と連動することで生きる。だが、現状では中央に入ってプレーする時間が少ない。
一歩引いてバランスを見ながらプレーしている?
また、個人的な状況も異なる。
当時、キャプテンは藤本康太で柿谷は自分のプレーに専念するだけでよかった。
今回は3年ぶりのJ1の舞台で、監督もユン・ジョンファンになったばかりだ。チーム状況から、またキャプテンという立場から自分のプレーだけに集中すればいい立場ではない。
もともと「熱」を発するタイプではないが、ここぞという時には自分を押し出し、ゴールを奪ってきた。東アジア杯の韓国戦の2得点は、まさに自分が決めるという気持ちから決めたゴールだった。
それが柿谷の凄さだった。
今は、どうだろう。置かれた立場は異なるものの、ボールに触ると相変わらずうまい。清武とは異なるセンスがある。だが、ゴールへの執念みたいなものは以前ほど表立って感じられない。一歩引いて全体のバランスを見ながらプレーしている。大宮戦もシュートはわずか1本だけ。うまさはあるが恐さがなくなっている。