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ソウルスターリング、やはり怪物。
オークスの直線で5回替えた「手前」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/05/22 11:20
2歳女王のその後は、実はかなり明暗が分かれる。3歳でも頂点に立ったソウルスターリングは、ウオッカ、ブエナビスタのようなスターの道を歩くのか。
普通のスケールでは測れないラスト500mの走り。
ラップを見ると、最後のほうは厳しい戦いだったはずなのだが、鞍上にも、見ている私たちにもそう感じさせなかった。
不思議だったのは、直線での手前の替え方だ。4コーナーを左手前で回り、直線入口で右手前に替えた。ここまでは他馬と同じだったのだが、ラスト400m地点で左手前に戻し、ラスト300mあたりでまた右手前に替え、ラスト200m地点でまたまた左に戻した。と思ったら、ラスト100mあたりで右手前にして、そのままゴールを駆け抜けた。約500mの直線を、約100mごとに手前を替えながら走り切ったのだ。
普通、何度も手前を替えるのは、前週のヴィクトリアマイルで7着に終わったミッキークイーンがそうだったように、走りが本来の状態ではなかったときに見られるものだ。
ところがソウルスターリングは、これだけ手前を替えながら、鞍上に「きょうが一番強かった」と言わしめたのだから、不思議というか、普通のスケールでは測ることができない馬、ということなのか。
藤沢調教師は史上2人目の重賞100勝。
14戦14勝というとてつもない強さで世界を震撼させた「怪物」フランケルの娘は、世界でも産駒初のクラシック制覇をなし遂げ、別種の怪物としか言いようのない強さを見せた。それも、時計の裏付けのある強さだ。同じことが、2週前のNHKマイルでワンツーフィニッシュを決めた2頭の3歳牝馬にも言える。
ソウルスターリングはこのレースで、自身の強さと同時に、今年の3歳牝馬が評判どおりにハイレベルであることをあらためて証明してみせた。
今後はどんな路線に進むのか。
古馬の牡馬勢とやり合うところも見たいし、かつてのウオッカ対ダイワスカーレットのように、超ハイレベルと言われた同世代の牝馬同士の戦いも見たい。
このレースで、尾形藤吉元調教師につづく史上2人目のJRA重賞100勝を達成した藤沢調教師は、どんな舞台で、どのようにこの馬の強さを引き出していくのだろう。
競馬界の新たな宝物がどんな輝きを放つのか、またひとつ大きな楽しみが増えた。