沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
世代がハイレベルだと新星は出ない。
オークスは桜花賞上位勢の3強状態。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/05/20 08:00
今年はディープを抜いてハーツクライ産駒がもっとも多い。その最右翼がリスグラシューであるのは多くの人が同意するところだろう。
実は武豊が最後にオークスを勝ったのはエアグルーヴ。
桜花賞の1~3着は、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズの1~3着の順番を入れ替えただけの結果だった。同様にハイレベルと言われた昨年の牡馬クラシックでは、マカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティ、エアスピネルらが順番を入れ替えながら、たびたび上位に顔を出していた。
今回も、桜花賞の1、2着馬がまた上位争いする可能性は大きい。
この時期は距離適性より力、と記したばかりなのに矛盾したことを言うようだが、エンジンのかかりが遅く、加速に時間のかかるリスグラシュー(父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)は、じっくり構えて競馬のできる東京の2400mは大歓迎だろう。2着に追い込んだ桜花賞では、4コーナーで置かれながらも直線でしぶとく伸び、「もうちょっと距離があれば」と思わせた。
騎乗する武豊は、1996年にエアグルーヴで勝って以来、オークスの栄冠に手が届いていない。勝てば21年ぶり、4勝目となる。
ルメールとの腕比べが、見ものだ。
桜花賞馬レーヌミノルはいかにも距離がきつそうだが。
桜花賞馬レーヌミノル(父ダイワメジャー、栗東・本田優厩舎)は、父ダイワメジャー、母の父タイキシャトルという血統からマイルでも長いのでは、と言われていただけに、今回は人気を下げてくると思われる。しかし、母の父サクラバクシンオーのキタサンブラックが3200mの天皇賞・春であれだけの力を見せつけたのだから、スプリンターやマイラーの血をマイナス要因としてばかりとらえるべきではない。
キタサンブラックにとって、バクシンオーの血は、スーパーレコードを叩き出すスピードの源であるのかもしれず、レーヌミノルの血統背景も、スピード決着になったときには大きな強みになるかもしれない。
武のベガが牝馬二冠を制した1993年は、桜花賞もオークスも、2着ユキノビジン、3着マックスジョリーと、同じ3頭で決着した。桜花賞で5着、オークスで6着だったホクトベガが、エリザベス女王杯を制したのちに砂の女王として君臨したように、この世代の牝馬のレベルも高かった。
同じ顔ぶれの馬が上位を占める年がハイレベルなのは、それだけ他馬が付け入る隙のない激しい戦いをしているから、ということか。