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埼玉・花咲徳栄の野村佑希は化物か。
高校野球ミレニアム世代にまた1人。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byAsahi Shimbun

posted2017/05/11 17:00

埼玉・花咲徳栄の野村佑希は化物か。高校野球ミレニアム世代にまた1人。<Number Web> photograph by Asahi Shimbun

先物買いは高校野球の楽しみのひとつである。野村佑希、また面白い選手がでてきた。

巨人・坂本勇人によく似た打撃の形。

 さらに準々決勝のふじみ野戦は、第1打席がセンター前ヒット(センターのエラーで二進)で出塁し、第3打席は内寄りのストレートに対して体を開かずに押し込んでレフト前に運び、4打数2安打。他の選手よりグリップ位置が高く、このグリップ位置が下がらないというのが最大の長所で、プロで似た形を探すなら坂本勇人(巨人)が最も近い。低めに強く、内角にも対応できるというのが本家同様のよさである。

 準決勝の春日部共栄戦は私用で見られなかったが、スポーツ紙によれば犠牲フライ、2点タイムリーで3打点を挙げている。もはや、対戦相手がどうとかいう話ではない。コンスタントに長短打を打ちまくり打点をあげる安定感はセンバツで評判になった選手たちを超えている。

 決勝は全国的に見ても強豪に数えられる浦和学院が相手で、無死一塁で臨んだ第2打席は内側からバットを振り出すインサイドアウトの形で内角球を捉え、レフトスタンドにあっという間に放り込んでしまった。試合は延長10回の末、6-7で敗れたが、埼玉大会では5戦して14打点3ホームランを記録し、十分すぎるほどの凄みをライバルたちに刻み込むことができた。

スカウトの間でも「清宮の次はこの選手」。

 これだけいいのにどうしてスポーツ紙は取り上げないのかなと思っていた5月7日には日刊スポーツが「こちらも4番野村だ」という見出しで、次のような記事を書いていた。

「1-5の4回無死一塁、左翼へ高校通算22号となる2ランを放った。『冬に打ち込んで(ボールを)前で捉えられるようになった』と話した通りの成果を見せた。今春だけで16本塁打を放ち、スカウトから『清宮の次はこの選手』との声も上がるほど。同じ右打者で早実4番の野村との対決を制してみせる」

 スカウトが評価するというのは私も聞いていて、草加戦でホームランを打ったあと日本ハムスカウトの今成泰章氏は身振り手振りで野村のよさを話し、センバツ期間中の関西遠征ではホームランを量産したことも教えてくれた。時にスカウトはサービス精神を発揮して60の選手を100に膨らまして話すことがあるが、野村についてはそういう誇張はなさそうだ。

【次ページ】 花咲徳栄はワンマンチームではないことも強み。

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