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横山典「もうひとつあるように感じる」
3歳マイル女王の本当のスケール。 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2017/05/08 11:20

横山典「もうひとつあるように感じる」3歳マイル女王の本当のスケール。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

仁王立ち、といった風情のアエロリットと横山典弘。母アステリックスはまだ7歳で、アエロリットが初仔。弟妹たちが楽しみだ。

横山が感じる「もうひとつ」上のギア。

 アエロリットに関して、横山は「自分のなかでは、もうひとつ(上の段階が)あるように感じている」と話している。たんに成長の余地があるという意味ではなく、一流騎手だけが感じる「特別な何か」があるのだろう。「時計の速さを感じさせないのがこの馬のすごいところ」と横山に言わしめたのは、父クロフネ譲りの大きなストライドゆえか。さらに「乗り方ひとつで距離はこなせる」というから、何年かに一頭、いや、もっとしばしば登場する「マイル前後で牡馬以上の強さを見せる牝馬」以上のスケールを期待してもいいのかもしれない。

 これが新馬戦以来の勝利。新馬のあとは、牝馬限定のサフラン賞、GIIIのフェアリーステークス、クイーンカップと3戦連続2着となり、前走の桜花賞は5着だった。アエロリットが力を出せなかったから勝ち切れなかったのかもしれないが、実際、この馬に先着した牝馬が何頭もいたのだから、素直に全体のレベルの高さを評価すべきだろう。

負けた馬たちも、まだ見限るわけにはいかない。

 2着に追い上げてきたリエノテソーロも強い。芝でデビュー勝ちし、つづく芝のオープンも連勝。さらに、ダートのGIIIとダートGIの全日本2歳優駿を勝って戦績を4戦全勝としたが、年明け初戦、芝1600mのアネモネステークスでは4着。この負けのせいで、ダート馬だと思い込んでしまったファンが私を含めて多かったため、13番人気という低評価になったのだろう。芝とダートの両方で牡馬の一線級を凌駕する走りをしたこの馬は、アエロリットとは違った路線で、スケールの大きさを見せてくれそうだ。

 早くから「怪物娘」と呼ばれたフランケル産駒のミスエルテは、初の長距離輸送と慣れない環境のせいか、パドックでは発汗して入れ込んでいたのだが、そう大きく負けない7着に来た。けっして早熟ではなく、今後も条件さえ合えば、高いパフォーマンスを発揮するだろう。

 桜花賞で4着に来た末脚と、それまで3連勝していた安定した走りを評価され1番人気に支持されたカラクレナイは、ブービーの17着に沈んだ。この馬も輸送と環境に適応できなかったのか、発汗と入れ込みがひどく、ゲート入りする前に勝負が終わっていたように見受けられた。逆に言うと力負けではないので、これで見限るわけにはいかない。

【次ページ】 「牝馬がハイレベル」自体が疑われ始めていたが。

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