マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
履正社・安田尚憲vs.日大三・桜井周斗。
濃厚な5打席はまさに“闘争”だった。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/03/22 07:00
清宮が太刀打ちできなかった桜井の宝刀を、安田が仕留める。センバツ初日に実現した5打席勝負は、高校野球ファンにとって極上の瞬間だった。
スライダーに疲れが見える。安田はピンと来ていた。
桜井のスライダーに疲れが見える。
打撃センス抜群の安田の感性に、そのことがピンと来てないわけがない。
5打席目、初球の外の速球は、あっという間にレフトフェンスにライナーで持っていかれていた。
投げも投げたり、打ちも打ったり。どっちも見事だった。すでに夏の成熟度があった。
この期に及んで、このフラットさはなんだ!
安田がすごい! と唸った理由が2つあった。
つぶしてやる……と内心意気込んでいたはずのスライダーに、一度も当たりもせずに3つの三振を奪われていれば、普通なら「もうダメだ」と心がボッキリ折れていて、この場面では、破れかぶれのフルスイング、いや“パニック・スイング”で4つ目の三振を喫していてもぜんぜんおかしくない。
にもかかわらず、安田のスイングは間違いなく、左方向に強く弾き返そうとする意識がはっきり伝わるスイングだった。
この期に及んで、このフラットさはなんだ!
すごいヤツだと驚いた。
さらに、もう1つの理由はこうだ。
桜井周斗のクロスファイアーをレフトフェンス直撃に持っていった、スイングの合理性だ。
かなりのレベルの高校生でもインパクトでバットヘッドが負けて、ファールがやっとの勢いのクロスファイアー。それを完璧に振り抜いてレフトフェンスまで持っていった。
真っすぐに、切れずに伸びた打球の軌道が、安田が振り勝った何よりの証拠だ。